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魔女がそばを離れても、茨は暴れ回り、アリエル様に話しかけられるような状態ではなかった。
「ディラン、サンディーを任せた。」
「エリック様……?!何をするおつもりで……」
俺にサンディーを預けると、茨から離される。
「ディラン。」
「……はい、エリック様。」
「俺は、アリエルを信じて、正面から向き合わなければならない。そうだろう?」
「……はい。」
「だから、止めるなよ。」
一体何をするつもりなのか。
俺にはまだ、わからない。
「……アリエルを、信じてるから。」
優しく微笑んだエリック様が、茨に向かって走る。
「エリック様?!」
その中心、黒い塊に向かって、エリック様はまっすぐ向き合った。
次の瞬間、茨がエリック様目掛けて一直線に伸びてきた。
「エリック様!!!」
「っぐ、ぅ……」
それは、エリック様の腹を貫いた。
避けられたのに、避けなかった。
エリック様は茨に手を添え、塊を見据える。
いや、見つめていた。
「アリエル。」
優しく、落ち着いた声。
「アリエル、聞こえるな?」
エリック様は、落ち着き払っていた。
その雰囲気に、俺も、サンディーも、近寄れずにいた。
「アリエル、大丈夫。大丈夫だから、落ち着くんだ。」
茨の動きが、緩む。
「アリエル、俺の声が聞こえるな?」
*
『アリエル。』
優しい声が聞こえる。
『アリエル、聞こえるな?』
エリックの声に、目を開ける。
「っ、ぇ、なにっ、これっ……!」
見えた光景は、悲惨で、酷いものだった。
『アリエル、大丈夫。大丈夫だから、落ち着くんだ。』
エリックが、優しく声をかけてくれる。
俺を、呼んで、くれてる。
『アリエル、俺の声が聞こえるな?』
聞こえる。うん、聞こえてる。
俺のこと、アリエルって、呼んで、くれてる。
『じゃあ、あの声も、聞こえるな?』
エリックが、破壊された城の窓の外を見る。
そちらに意識を集中させる。
『アリエルー!』
『アリエル様ーっ!』
『アリエル様!!』
『ありえるしゃまー!』
アデルバート、カイ、国のみんな。
みんなが、俺を、『俺』を、呼んでいる。
『アリエル。お前は、みんなからあんなに愛されてるんだ。』
愛、されてる?
これだけ、壊して、傷つけても?
それでも、『俺』は、愛されてるの?
『アリエル様ー!』
『魔女なんかに負けるなーっ!』
『俺達がついてます!!!』
次々に聞こえる声。
それは確かに、俺に向けられたものだ。
『アリエル。』
エリックが、呼んでる。
『誰より、俺が、お前を愛しているよ。』
エリックが、『俺』を?
『【ルナ】でも、【アリエル】でも、関係ない。俺は、お前を、お前だけを、愛している。』
優しく微笑んだエリックを見て、涙が溢れた。
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