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ハッ、と気がついた。
おかしい。
俺は、確実に瀕死だった。
なんともない。
傷も塞がっている。
嫌な予感がして、横を向く。
「……ディラン、そろそろ離してあげなければ…」
「っ、もう少し、だめですか……」
「……しかし、そのままでは、アリエル様も可哀想ですよ……きちんと、してあげなければっ……」
ディランに抱きしめられているその体は、ピクリとも動かない。
「……どういう、ことだ。」
「っ、エリック様……!」
「……説明、しろ。」
説明なんてなくても、何が起きたかなんて分かりきっていた。
ただ、理解したくないだけだ。
「……俺の、せいだな。」
「エリック様、それは……」
「……いいや、俺のせいだ。」
魔女に騙され、うつつを抜かし、アリエルを散々傷つけ、結果はこれだ。
そっと手を伸ばし、触れた頬は、まだ温かい。
「俺の、せいだな……俺なんかに、出会わなければ……お前は、きっと……」
こんなにも傷つくことも、泣くことも無く、笑って、幸せに暮らせたのではないか?
「……っ、アリエル……」
それでも、俺は。
お前に苦労をかけるとわかっていて、この陸に置いた。
離したく、なかったんだ。
愛していたから。
誰よりも、愛しているから。
「…アリ、エルっ……愛して、いるんだ……」
抱きしめた体は、細くて、今にも折れてしまいそうで、消えてしまいそうで。
「……っ、まだ、間に合いますか?俺と、アリエルの命を、交換できますか?」
アリエルのお父様を振り返る。
海の王は、その魔法を使うことが出来ると聞いたことがある。
「エリック様……!それは、アリエル様のお気持ちを、ふみにじるっ、ことで……!」
ディランがそう言う。
わかってる。
アリエルの、気持ちは、わかってる。
でも、アリエル。
俺だって、同じ気持ちなんだ。
「……アリエルのいない人生なんて、もう送りたくないんだ。」
ディランがぎゅっと顔を歪める。
アリエルも、同じことを言ったんだろう?
でも俺は、アリエルに生きて欲しい。
「…ふはははっ…本当に困った子たちだ。」
「……え…?」
アリエルのお父様が、突然笑った。
「……それだけ、息子を抱きしめておきながら気がつかないか?」
アリエルを抱きしめたのは、俺とディラン。
2人で顔を見合わせる。
「私が、そう簡単に息子を死なせるとでも?」
それじゃ、アリエルは。
もう一度、ぎゅっと抱きしめた。
トク、トク、トク
と、鼓動が聞こえる。
「……きこ、える…」
「……え…?な、それ、は……ど、ういう…?」
「呪いの伝説が、間違って、いたのでしょうか……?」
混乱するディランとカイ。
もちろん、俺の思考も追いついていなかった。
「間違ってはいない。続きがあるのだ。」
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