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「エリック様?私は、先に申し上げましたよね?」
東の塔でディランに世話を焼かれているアリエルを後ろに、俺はカイから怒られていた。
「アリエル様はまだ万全の体調とは言えないため、無理を強いてはいけませんと。」
「あの、カイ……おれが、さそったから……」
ベッドの上からアリエルがそう言ってくれるが、カイからのお叱りがそれで免れるわけはなく。
「それでもです。やりすぎでしょう。」
「……すまない。」
「大体、本日からアリエル様のご公務も再開しようかと思っていて、国民も皆楽しみにしていたのですよ!」
それは申し訳ないことをした。
アリエルも国民と触れ合うことは好きだし、国民もアリエルと話すのが大好きだ。
「はぁ……今後は、陸と海を束ねていく王となるのですから、そのあたりの自制も身につけてくださいませ。」
「あぁ……善処する。」
「……ディラン、お食事をお持ちしましょう。」
「はい。」
カイとディランが出ていって、アリエルと二人になる。
「ごめんね、エリック……」
「いや、いくらアリエルに誘われたとしても、やりすぎたよ。」
「ふふ……ねえ、エリック。」
アリエルがゆっくり、俺の方に体を向ける。
「魔女が来て、すごく辛いことがたくさんあったけど……エリックの新しい1面も知れたし、エリックはどんな俺でも愛してくれるってわかった。」
「……うん。」
「だから、今では、魔女が来たことが、悪夢ではないかなって思ってる。来なければよかったとは思うよ?でも、なかったことにしたいとは、思わない。」
「うん。それは俺もだ。アリエルを傷つけてしまったことは、後悔している。でも、皆がどれほどアリエルを大切に思っているか知ることができたし、アリエルはどれほど俺を一途に思ってくれているかがわかった。」
アリエルがそっと微笑む。
そう、あの災厄はなかったことにはしたくない。
どんな状況でも、俺たちは愛し合えるとわかったのだから。
「それに、サンディーもうちに来なかったかもしれないし!」
「ははっ、確かにな。」
「俺、エリックに愛されて、エリックを愛することができて、すごく幸せだよ。」
「……うん、俺もだ。」
これから先も、きっと小さいこと、大きいこと、たくさんの苦労と困難が待っていると思う。
国を治めるとはそういうものだ。
けれど、アリエルとなら、愛に溢れた国を作ることができると思う。
「アリエル、改めて、俺と結婚して欲しい。父上に頼まれたとおり、陸でも海でも、挙式をあげよう。」
「うん……!すごく素敵……色んな人が参加できるようにしたいね!」
「そうだな。皆に相談しながら、決めていこう。」
「うん。」
花が咲くように笑うアリエル。
この笑顔を、二度と枯らすことがないようにしたいと、俺は思う。
泡となって消える言い伝えなんかより、温かな愛の方が確かにここにある。
これからもアリエルと共に、温かな愛を。
END
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