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はじまりの出会い
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「福岡から転入してきました、朝宮ハルです!よろしくお願いします!」
一息に言って、ぺこりと頭を下げる。
教室の中が少しだけうるさくなって、またすぐに静かになった。
「はいありがとー。じゃ、朝宮の席は窓側の端っこだから」
先生が指差す先には、一つだけぽかりと空いた席。
窓側の一番後ろだ。
端っこかあ……嬉しいけど、なかなか人に話しかけにくそうだなあ。
そんなことを考えながら席に向かう。
隣の席は、何やらぼけーっとどこかを見つめている、不思議な男の人だった。
目も口も半開きで、髪の毛なんか銀色だし……なんか怖い。
と、俺がおそるおそる自分の席についた瞬間、ぐりんとその男の首が曲がった。
「ひっ」
な、な、なんだ!?
その人は、驚いて一歩退いた俺をじいっと凝視する。
そのまま首を左右に何度か揺らしてから、こう呟いた。
「……あー?……あ、ああ。あー……てん。てん、てんにゅう、ううう?」
「……へ、え?」
よく意味が分からない。
てか日本語か、今の?
男がもう一度口を開く。
「にゅう?」
「……に、にゅう?」
「てん、にゅ?」
「てん……あっ、転入?」
俺が尋ねると男はこくこくと嬉しそうに頷いた。
どうやら俺に「転入生か?」と聞いていたらしい。
少しだけコミニュケーションが取れたことにほっとする。
「そうだよ、転入生。さっきの聞いてなかったのかよ」
「う、ううー?……わ、わかん、ねえ……」
「俺、朝宮ハル。お前は?」
「……まぁ。ヴ……ち……」
「……まぶち?」
「……ま、ヴ、ち」
男はぶんぶんと首を横に振り、やけに「ヴ」の発音にこだわってくる。
というか……何でこんな赤ちゃんみたいな喋り方なんだろう?
色々と不思議に思っていると、先生が俺たちの方を見て困ったような顔をして言った。
「こら馬渕。転入生に絡むな。悪いな朝宮、そいつちょっと変わってるんだ」
……変わってる、で済むのか?これ。
とりあえず名前は「まぶち」で正解らしい。
先生に注意された手前、ひとまず前に向かって座り直すが、やはり気になって横目でそいつに視線を送ってしまう。
馬渕はもう俺のことなど忘れてしまったかのように、自分の指を噛んでうんうん唸っていた。……変なやつ。
よく見ると馬渕は片方しか靴を履いていなかった。もう片方は裸足だ。
おまけに頬には大きな痣があるし、制服もヨレヨレ。
ぼさぼさの銀髪はあちこち跳ねていて……うわっ、髪の隙間からピアスが見えた。しかも半端な数じゃない。
……おかしなやつと隣になっちゃったなあ。
なんて、少しだけ不安になりながら、俺はため息をついた。
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