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ヤリチンボーイの初恋1
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「えーと、さっきのが第二図書室で、こっちが第三……んで、廊下渡って……」
昼休み。
俺は先生からもらったメモを頼りに学校全体を見て回っている。
だが、さすがお坊ちゃん校……とにかく広い。
図書室だけで五個もあるって意味分かんなくね?
「……ん?」
渡り廊下を歩いていると、何やら人が集まって騒いでいる一角があることに気がついた。
みんな壁に貼られた何かを見てワイワイはしゃいでいる。
興味を惹かれた俺はそこに近付いていった。
「うおっとと、すいませーん……」
近付けば近づくほど人だかりの凄さに気圧されてしまう。
五十人ほどの生徒が集まって、何かが印刷されたポスターを見ているのだ。
よく見ると一番上に『校内ランキング〈四月〉』と書かれている。
……ランキング?テストの成績とか?
一番は……『小花依梓』?
あれ、ここって男子校だよな?でもこの子、名前が完全に女の子なんだけど……。
「あの、すいません、これって何のランキングなんですか?」
疑問に思った俺は隣でランキングを見ていた男の人にそう尋ねてみた。
その人は周りの熱狂的な生徒たちとは違って、さほど興味無さそうにしていたから話しかけやすかっただけなのだが……俺が話しかけた瞬間、その人は額にシワを寄せてぎろりと目を鋭くさせる。
「……あ"あ?」
「え、あ……あの俺、転入してきたばっかで……」
あれ、話しかける相手間違えたかな。
一瞬でそう後悔してしまうほど男は恐ろしい威圧感を持っていた。
俺より頭一つ分ほど身長が高くて、見上げるだけで首が痛くなる。おまけに目付きは悪いし、耳にはいくつもピアスが開いている。
これがいかにもな金髪なんかだったらむしろ怖さも薄れていたのかも知れないが、頭はやけにさっぱりした黒の短髪で、それが余計に有無を言わせない怖さを醸し出していた。
「……フーン」
男は顎に手を当てて、じろじろと俺の全身を眺める。
なんだか居心地が悪い。
「……あの、俺がなにか」
「るっせえ、許可もねえのに勝手に喋んな貧乏人」
「……はあ?」
今なんて言った、こいつ。
男は俺を眺めるのにも飽きたのか、フウと小さく息を吐く。
イラッとするが唇を噛んで何とか我慢した。そんな俺の様子が面白かったのか、男が鼻で笑ってこう答える。
「あー。で、このランキングが何か、だったか?これはな、生徒間の人気投票の結果だよ。ウチの学校はこれで校内のカーストが決まっからな。どいつもこいつも必死こいてるワケ」
「……人気投票?」
「おう。毎月一人一票入れて、得票数が多い順にこうやって貼り出されんだよ」
男の指差す通り、ポスターを見上げる。
一位、小花依梓。
二位、月出白。
三位、五十嵐綾士。
四位、光ヶ丘悠。………
男に気付かれないように俺は顔をしかめてオエ、と舌を出した。
男同士、生徒同士で票入れあって何が人気投票なんだか。
大体校内のカーストって……何時代のどこの話だよ。今時、女子だってそんなドロドロしてねえぞ。
と、ふいに男がニヤニヤして俺を見つめているのに気が付いた。
何だか嫌な視線だ。
だが目が合ってしまえば無視するわけにはいかない。
「……何ですか」
「フン、生意気そうなツラしてやがんなあ、お前」
お前に言われたくねえよ。
……とは口に出来ないので、そうですか?と適当な愛想笑いを浮かべて肩をすくめてみる。
だがそのからかうような態度が男の琴線に触れたらしい。
ぴくり、と太い眉が釣り上がって唇が歪む。
「……テメェ。俺が誰か分かってんのか」
「ぜーんぜん。そういや名前聞いてなかったですね。あんた、誰?」
「……ッ……!!」
わざと嫌な言い方をしてやると、男は面白いくらい顔を真っ赤にして歯を噛みしめた。
拳は力が入りすぎて血の気がなくなっている。
ちょっとやり過ぎたか?なんて思った瞬間、ぐいっと腕を引き寄せられた。
思わず体勢を崩しかけるが、それより先に男のもう片方の手が俺の顔を思いっきり掴んでいた。頬に指が食い込んで痛い。
「いい度胸じゃねえか、ああ?ちょっと付き合えよ、転入生」
……しまった。面倒なことになってしまったみたいだ。
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