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ふたつと、ひとつ
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七生は落ち着きなく辺りを見回していた。
今は亡き母親の故郷である日本を訪れたはいいが、連れて来られたのは人が集まるパーティーだった。世界的に名が知れつつある財閥の跡取りの就任を記念し、政治家や色々な国のトップがこぞって来席している。
そんな彼らと自身の違いに、七生は気が付いていた。
明らかな体格差とオーラ。周りと明らかに違っているその華奢な体型は、格好の的だった。
「……ねえ、あの子」
「もしかして……」
物珍しい目で見られる事も、蔑まれた言い方をされるのにも慣れたものだ。そう思うと自然と、自分の首元に触れる。
自分が“オメガ性”である事の象徴。七生は幼少期から周囲に守られ、外の人間に卑下されて生きてきた。そして次第に、自身の運命にも気付き始めていた。
アルファ、ベータ、オメガという3種類の性別。人類は男女の他に現れた特殊なそれに振り分けられる。アルファは人口が少なくエリートが多い。ベータは人口が最も多く、能力は平均的な人物が多い。
——そしてオメガ。その性は特別だ。唯一男性でも妊娠可能であり、定期的にやってくる発情期がある。アルファを惹きつけるフェロモンを持って生まれる性。そして特定のアルファと「番(つがい)」という特別な関係を結ぶことが出来る。
オメガとは、周囲に守られる性。守ってもらわなければ生きていけない性と言われている。
「八神七生です。」
「君はベータだったかな? もうすぐ次期当主のスピーチがあるから、ゆっくりして行くといい」
「……ありがとうございます」
(すぐバレる嘘を、どうして吐かなきゃいけないの……お父様)
そのため、オメガの人間はみな華奢な身体つきになってしまうのだ。七生にとって、それが一番のコンプレックスだった。
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