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最後の授業
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「お前学校好きだからって卒業式に脱走かよ〜!」
「やる事ちげぇわ〜安芸!!はははっ」
「メノウ先生捕獲おつかれ〜っ。」
教室を開けるやいなや飛び交うのは賑やかな
クラスのみんなの声。
メノウも笑って、僕も笑う。
ほんの一瞬で終わってしまった二人の時間だった。
でもなんか、僕もういいや。
凄く幸せだった。
メノウが僕の為に時間を割いてくれた事、
クラスの時間を遅らせてまで僕と話をしてくれた事。
”ひとりの生徒”でしかない僕なのに、
こんなに世話を焼いてくれた事。
それがどれだけ嬉しいか、
メノウはわかってくれる?
席に戻ると隣では、さっきまで付き添ってくれていた
親友が不安げな顔を覗かせた。
「…とーま、ちゃんと伝えたか?」
「は?何を?…つかお前、メノウ先生に
俺が死にそうとか言ったろ。」
「ほんとに死にそうだったじゃん。」
「…は?」
「おいこらー、お前ら先生の話を聞きましょー。
俺今結構いい事言ってたんだぞー。」
僕らに向かってメノウは少し大きな声を出す。
あ、またやっちゃった。
この三年間で初めてやっちゃう事が今日はやけに多い。
メノウの声を、吐息すら聞き逃さまいと
今までは必死に耳を研ぎ澄ませてたから、
話を聞けなんて言われた事なかったんだ。
最初で最後のお説教をそこそこ食らえたことも
また、幸せな1つの思い出として僕の胸の中に
刻まれるんだろう。
「じゃあ卒業証書、渡してくか…。
んー、たまには名簿の後ろから行くかな。」
メノウの一言に、賑やかだった教室はしんと静まり返る。
今日で終わりなのは、みんなも同じだからだ。
メノウを好きだろうが、そうじゃなかろうが
3年間通ってきたこの学校を卒業する”印”を手にするのは、なんだか信じがたいようで気持ちが若干重くなる。
名簿の終わりから遡っていくということは、
僕は相当後になりそうだ。
同じく名簿の早いこいつと二人、徐々に呼ばれていく
生徒を目で追いながらその時が来るのを待った。
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