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なんとなくまっすぐ帰る気にもなれなかった僕は、
公園内に設置されているブランコに座った。
明るいうちは小さな子供たちでにぎわっていたこの場所も、辺りが暗くなれば自然と人気は無くなり、
どこか寂しそうにも見てとれる。
僕も同じだ。
寂しいね、一人ぼっちは。
キコ、キコと地面に足をついたまま軽く揺らす。
同じだ、
なんて言っても
このブランコが寂しいのは夜の間だけ。
また明日日が昇れば沢山の子供たちに囲まれて、
嬉しそうに身体をきしませるんだろう。
それなら、僕とは違うか。
持っていたバッグを適当に置いて、
ちょっと本気でこいでみた。
もう何年もブランコに乗った事は無かったけれど、
昔は毎日のように遊んでいただけあって、
身体が感覚を取り戻すのに時間はかからない。
揺れるブランコは徐々に振れ幅を大きくして
僕はあっという間に公園全体を見渡せるくらいの高所へ到達していた。
これだけ揺れていれば、
桜の木の下に誰かが来ても良く見える。
諦めてその場から移動したというのに
それでもまだメノウの影を探す僕に
思わず笑ってしまう。
日が沈んで、おぼろ月がぼんやり照らす公園で
恐らくもう何度も着る機会はないであろう学生服を
身に纏い、大きく、小さく身体を揺らす。
僕が風を切って前に進めば、
世界はヒュッと後ろに流れる。
僕が風に逆らって後退すれば、
世界は再び僕の前に現れる。
それを何度か繰り返して、ようやく気分も晴れてきた時
桜の木に向かって走る1つの影を見つけた。
その影は、僕を見つけるとコツコツと音を立てて向かってくる。
スーツによく似合う革靴の音。
僕にはまだ似合わない、大人の音だ。
「…メノウ先生………。」
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