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ヒトと獣と 28
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ライトグレーの鱗に包まれた腕が何の前触れもなく伸ばされ、セテフの喉を捉えた。
セベクの右腕に力がこもり“ ギリリ ”と締め上げる。
だが頸にかかる圧に顔色一つ変えず対峙するセテフ。
二人は睨み合いそしてセベクが居間の壁にセテフを押しつけた。
その衝撃ではめ板が割れる。
そのまま吊るし上げんとするセベク。
彼のその背の後ろでは硬質の鱗に包まれた尾が揺らめき、噛み締めた口元からは鋭い牙が覗く。
尋常でない殺気の籠った瞳が紅く燃えている。
ふいにセテフの黒い手が鱗に包まれた手首を掴んだ。
セベクが今まで体験した事のない力で握られ、たじろいだ瞬間振り払われる。
後ろに飛びすさって再び睨み合う二人。
「 “男殺しのセテフ ” か… 」
「アキラは生きている。」
返す言葉は地の底のように低い。
「比喩だとしてもおかしな言い回しだと思っていたが…
そのままの意味だったのか。」
セテフの剣呑さを含んだ目が眇められる。
『そういえば以前、手加減して抱いていると言っていた事があったが…
確かあの時、ヤり殺すとかなんとか…』
目の前の、平時は一見優しげに見えるが其の実情け容赦のない射千玉のセテフ。
『相手がアキラだからこそ手加減しているという事なのか?
で、加減を間違えた? 』
セベクが溜息をついた。
と、同時に殺気も消える。
「貴殿、今の…俺の手を甘んじて受けたな?」
「私は…」
多少狼狽しているように見えるのは今朝のアキラの発熱ゆえだろう。
セベクは自分に置き換えてみて“ ゾッ ”
とした。
「その辺でよろしいですか? 」
いつの間にか隣室よりクヌムが現れていた。
「お二方がお取り込み中だったので勝手ながら私が指示を出させていただきました。」
クヌムは眠っているアキラの元へ二人を誘う。
「解熱とお休みになれるお薬を飲んで頂きました。
お二方が騒がしくなさらなければ数時間は眠っておられると思います。」
「原因は何なのだ? 」
セベクがまた、セテフを睨みつける。
「荒淫からくる過労…ヤリ過ぎですね。もしくは知恵熱?
誤解のないように申し上げておきますが、アキラ殿の体調はシリス殿の一件以前からよろしくなくて、たまたま今朝発熱なされた訳です。
したがって、諍いは無意味です。」
なんともいえないバツの悪さを感じて顔を見合わせる二人。
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