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砂漠の悪魔 4
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sideセベク
朝方、ジャッカルの叔父甥が満足したのを確かめて、俺はアキラを自分の部屋へ連れてきた。
くったりと脱力した身体を抱いて褥に入る。
抱き込んで眠る。
それだけの事がこれほど嬉しいとは。
身じろいで、自分から抱きついてきたアキラを思わず組み敷きたくなる。
だが、もう休ませてやらないとまた熱を出されるな。
sideアキラ
昨日出立して行ったアペデマクから無事、帰郷したむねの連絡が届き安堵する。
僕はこの世界の地理がよくわからないのだけど、アペデマクの家とコックピットが墜ちた場所は方角が違うそうだ。
そしてデンウェンが早速様子を見に行ってくれて、自分が運んで来るのは不可能だと結論づけていた。
今は、セティとアビスが向かっている。
夜には帰ると言っていたが……。
鍵のかかったスーツケースやコンテナを開けてくれたのはセベク。
今はもう居ない人達の荷物を勝手に開けるのには呵責もあるが、僕はこれらすべてを有効に活用しようと決心したんだ。
コンテナの中の荷物の中に僕のものは無かったけれど、教育係のひとの話ではかなりの量のものが墜ちていると。隣接した地域にも声を掛けてみればどうかと提案された。
セベクは渋い顔をしていたけれど……
客用の棟を丸々一棟、セベクは僕の “ 収拾品 ”の為に貸してくれた。
午前中いっぱい、館の侍女さんたちの手を借りて “ 展示 ”していったが殆どが衣類だった。
午後、僕はセベクの目を盗んで館を抜け出した。
老女にだけは行き先を告げてきたが当然良い顔はされない。
セティやアビスの居ない、セベクの目の離れた一瞬。
今、この時しかチャンスがない、これから行く場所は……
ホルのところ。
僕は意識がなかったけど、老女らに聞くと、“最中 ”に踏み込まれてアビスに連れ出されたホルは、建物の外へ出た瞬間獣化(鳥化? )して飛び立ったのだという。
ずっと気にはしていたが、皆が離してくれない。
怪我もないようだが家にいるのだろうか?
僕の手にはあの時置いていかれたナイフが握られている。
今日はこれを返すのが目的だが、本当にそれだけ?
彼に会いたいから、後で叱られる事を厭わずこんな所を歩いているんじゃないの?
答えはもうすぐ出る。
さて、どうしようか?
とりあえず河は渡った。
余り面識のない鰐人だったが普通に渡してくれた。
あ、僕は今サンダルを履いている。
だからもう足は切らない。
「ねえ。」
実は僕には二人の護衛がついている。
視界に入らないようについて来ているのに暫く前に気がついた。
そりゃそうだよね。
僕ひとりで、出掛けられるはずがない。……やっぱり。
「ねえ、今の時間ならホルは何処にいるかな? 」
姿は見えないが声は聞こえる。
「幾つか、見て参りましょう。
ここから動かないで下さい。」
ホルはシリス邸にいるそうだ。
うわ……僕、あそこに行きたくない。
「行かれますか?
それとも、お呼びしましょうか? 」
え? 呼べるの?
僕の様子を見て、気配が一つなくなった。
もう一つの声が僕を木陰に誘う。
僕は木の根元に座るとそこにもたれて目を閉じた。
sideホル
“ まさか、まさか。 ”
ホルは今、鳥化して指示された場所に急ぐ。
シリス邸での執務の最中、何処からともなく聞こえてきた声が信じられない事を言う。
アキラが来ていると……。
アキラが俺に逢いに来ていると。
邸を飛び出した俺は河辺に近い木立の中に天女を見つけた。
金色の髪をした小さな子供。
薄い胸は規則正しく上下していて、閉じられた瞼には長い睫。
眠っている?
俺はすぐ側に降り立つと、そっと頬に触れた。
本当に、小さく身体を折ってアキラの唇に口づける。
その髪に指を潜らせて、梳いて……
俺はアキラを抱いて立ち上がった。
「あれ?ホル? 」
すぐに目覚めたアキラに抱きつかれる。
「これ、持ってきたの。
この間、置いていったでしょう? 」
差し出されたのは、確かに俺のナイフ。
だが、「こんなものの為に中洲を抜け出してきたのか? 」
アキラは暫く、考えこむかのように黙り込んでいた。
そして……
「違う。……僕はホルに逢いたいからここに来た。」
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