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砂漠の悪魔 18
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sideセベク
『ヤらせろ、構わせろってかよ…… 』
アヌビスの軍団を迎える為、村外れの草原……だった練兵場の貴賓席に収まっている。
後ろにはデンウェン。
先日の一件でデンウェンの本気が俺たちに示された。
セテフは一も二もなく了承したが俺はどうしても腑に落ちない事があるので今朝聞いてみたのだが……
「情を交わした相手を他の男の元に送り届ける。
そんな事、耐えられるのか? 」
0よりマシだと。
騎竜として他の者より長時間側に侍れるなら幸せだと、あいつは笑った。
「お前がアキラを連れて逃げないという保証は? 」
デンウェンの表情が引き締まる。
本気で言っているのか? と、反対に問い返された。
あの、脆弱な身体のちい姫を連れてどこに逃げるというのだと。
自分は他の者たちと違い館を構えていない。
ちい姫は本体の俺が暮らす洞窟のような所では生きていけない。
気候が比較的温暖で水もたっぷり使えて食糧もふんだんにある、中洲のような所でないと、あっという間に弱ってしまうだろう。
そして、その先は?
俺は自分の鱗が逆立つのを感じた。
目の笑っていない笑みを浮かべて、わかった? と聞いてきたデンウェン。
俺は最前列中央でセテフに抱かれて着席しているアキラを見つめていた。
練兵場として造営された草原の遥か彼方。
突然見え出した黒い点が見る見る間に大きくなっていく。
先頭には3騎の騎獣。
僅かに前に出ているのはアビスか。
二人の副官を従え、その後ろには団旗、軍団長旗、団旗と旗を持って騎乗するもの三人。
その後ろに続く軍団は途切れる事なくつづく。
「一体、いくら居る? 」
セベクは斜め前に座るセテフの背中を突ついた。
「約5000。」
「喧嘩売りに来たのかよ? 」
「ふふふ……まさか。」
振り向かないセテフが、いま何を考えているのか読み取れない。
騎獣に乗ったアビス達が所定の位置につき歩兵が進軍して来るのを見ていてセベクはあることに気づいた。
全員が半獣化していて準礼装している。
そして、ある時点で隊列が二つに割れ真ん中を進んできたのは儀仗隊。
「これは?」
青と黄の横縞のエジプト頭巾を着けた彼らは、儀礼用の装飾された弓、槍、鉾を携えた3隊で構成されている。
それらが停止して………アビスが騎獣から降りた。
セテフがアキラを抱いたまま壇上から降りアビスの元へと向かう。
王旗が掲げられ太鼓が打ち鳴らされた。
このような陣形の閲兵は初めてだ。
「セティ?」
「ふふ……アビスは頑張った様だね。」
セテフの唇がアキラのそれに重ねられ、素早く離れた。
それを目撃し息を呑んだ者は少なくない。
なかでもセテフとの付き合いの長い副官、
“ 薄暮 ”のホルエムヘブは目を見張った。
己の主が例え子供といえど、他者を抱いて運ぶなどと見たことも聞いた事もない。
更に、驚くのはあの子供が “ 天女 ”だということだ。
この件について口数の少ないアビスから得られる情報は皆無だった。
今、初めて目の当りにして絶句……
山犬王の “ 相手 ”に対する好みは熟知している……はずだった。
それが……一族の長と軍団の長が娶った番は子供?
下げられていた槍や鉾が掲げられる。
弓は構えられた。
左右に分かれた隊列の中央を、アキラを抱いたセテフが進んで行く。
「セティ? これって? 」
「ラー、皆がラーを歓迎している。
手を振ってごらん。」
アキラは控えめに手を振ってみた。
途端、割れんばかりの歓声があがる。
同時にセベクは理解した。
これは、王の伴侶を迎える “ 栄誉礼 ”だ。
「やられた。」
そして、この後に続くのは……
中心部に敷物が敷かれその前にアビスが待っている。
セテフから委ねられたアキラをしっかりと抱き締め、頬ずりした。
そして、アキラが敷物の上に降ろされる。
アキラの今日の衣は、鰐館の女達の最高傑作だった。
二重にかさねられた衣の上側は、凝った織り柄の入った薄布だ。
帯の色は鮮やかな蒼。
ツユクサの花弁から採った染料で何度も何度も染めた手間のかかった逸品だ。
そして髪の一房にアビスから贈られたビーズが揺れている。
仄かに薫る、乳香の香り。
花嫁の為の装いと言わずして何と言うか?
「ラー。」
射千玉のセテフがアキラの手をとり、その指先に口づける。
唇を離したセテフが突然膝を折った。
「我、射千玉のセテフ。
アヌビスの一族の長。
戦乱の戦神と呼ばれるもの。
この名にかけてお誓い申す。
汝、マアト・ラー・アキラを永遠に愛し、慈しみ、守護せんことを! 」
再び指先に口づけを落とすセテフに、アキラは頬に口づけを返した。
怒涛の歓声があがる。
そしてそれが静まった後はアビスが跪いた。
「我、橡のアビス。
アヌビスの軍団の軍団長。
鰐王の鱗を剥ぎしもの。は、この名に、この命にかけて、御身を愛し、お護り申し上げ、更に御身が為に軍務に尽くす事をお誓い奉る。」
アビスもまた、繊指の先に口づけた。
お返しの唇が頬に触れる。
と、力強い腕に引き寄せられて、アビスの唇が重なってきて、舌が入ってくる。
今度は、多少冷やかしの色を含んだ歓声があがる。
「くそっ! やられた! 」
セベクが歯軋りせんばかりに悔しがっている。
デンウェンには理解出来ない。
「馬鹿野郎! アレはジャッカル族の婚姻の誓いだ。」
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