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オプローグ
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人生イージーモードだった。
容姿端麗、頭脳明晰、秀外恵中。
俺に向けられる言葉は数多く、子供の頃からずっとちやほや持て囃されて生きてきた。
学校では女子がイケメンやら王子だとか言って俺を持ち上げ、男共は嫉妬どころか憧れの眼差しを向けてくる。
勉強も運動もそう努力しないで器用になんでもこなし、挙げ句の果てには教師までもが贔屓する。
おまけに家まで金持ちで、長期休みは決まって海外でバカンス。
特に不幸な生い立ちもなければ両親や二人の兄貴は俺をめちゃくちゃに可愛がり、甘やかされ放題で欲しい物はなんでも手に入る。
何の苦労も不自由もなく、全てを持っていると言っても過言ではない毎日。
誰もが羨み、誰もが憧れる、そんな人間。そんな人生。
「くっそつまんね」
夕暮れに染まる教室で、今時古典的すぎるラブレターを窓からぶん投げる。
最低なことをしている自覚はあるが、いい加減毎日大量に机の中に入れられるこっちの身にもなれ。
俺の机はポストじゃねーんだよ。
気に入らないのはラブレターだけじゃない。
ハタから見れば都合よさそうな人生だろうが、俺からすれば全くそんなことはない。
街を歩けばカメラを向けられ、知らない奴につけられ、かといって視線を向ければキャーキャー言いながら逃げていく。
人と会話をすればどこか上の空で、どいつもこいつも真っ赤な顔で目すら合わせない。
そう、つまり俺が大衆に羨まれる存在である事と、本人が満足しているかはまた別の話だ。
俺の悩みは数多く、あげればキリがない。
これは決して贅沢な悩みなんかじゃない。
人より少しばかり持ちすぎた俺が、誰もが当たり前に持っているものを求める、そんな話だ。
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