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――気になる。
めちゃくちゃ気になる。
有坂との勉強会を終えて、再び学校が始まる。
あの日は結局有坂に家まで送ると言われたが、さすがに断った。
家までとなれば電車代も掛かるし、駅まででいいからと返してさくっと別れたわけだが、さすがは最強のお人好し。
律儀すぎんだろ。
もちろん拗ねてた気持ちは有坂のおかげで全回復して、家にはまた違う日に行く約束もした。
じゃあ一体何をそんなに気になっているのかというと。
当然『有坂の彼女』について、だ。
いやさすがにその手のことに関してズケズケ聞くのはデリカシーに欠けるし、友人として余計な詮索をするのは絶対に良くない。
そんなのは分かってる。
分かっているが、どう考えても気になる。
いや気にならないわけがない。
俺にとっては野球部の追試なんかよりよっぽど死活問題だ。
「何をキョロキョロしている」
昼休み。
購買で弁当を買う有坂を待ちながら人の流れを観察していたが、さくっと買って戻ってきたらしい有坂に不審人物でも見るような目で見られた。
「いーや?別に」
「誰か探しているのか」
「探してない」
本当はめちゃくちゃ探してる。
もしかしたらそのうち現れるんじゃねーかと警戒している。
誰かってそれはもちろん『有坂の彼女』だ。
彼女に関しては本人に聞くのが一番早いのは分かってるが、そういうのはこっちが聞き出すのではなく自然と有坂の方から言ってほしい。
むしろ恋愛トークくらい打ち明けて貰えるようにならないと、『友人』とは呼べても『親友』とは呼べないんじゃないか。
「じゃあなんだ。トイレか」
「俺は犬か。したくなったからってそんなソワソワしたりとかしねー…」
「結城」
不意に言葉の途中で有坂に腕を引かれる。
話しながら部室に向けて歩いていたが、目の前に人がいてぶつかりそうになっていた。
ちゃんと前見て歩けと自分のことは棚に上げて眉を潜めると、目の前の人物は俺の顔を見てハッとしたように目を瞬く。
まあよくある反応だが、さっさと道をあけてくれ。
「…うわー、ほーんと綺麗な顔してんね。有坂どうやって知り合ったんだ?」
が、どうやら有坂の知り合いらしい。
またしても邪魔者が現れた。
今日の邪魔者はイカツイ坊主頭でもモヤシ丸メガネでも暑苦しそうな野球部メンバーでもない。
赤茶けた髪に耳にはピアスまでついていて、なんだか見るからにチャラそうな奴だ。
「春屋か。お前寮長が怒っていたぞ。寮に女を連れ込むのはやめろ」
「あー、昨日の女声デカかったからなー。これだから童貞男子と隣部屋になるのダルいんだよな」
「規則のことを言っているんだ。異性を寮へ入れるのは禁止だろう」
「えー、ありちゃんまでそういうこと言う?俺達親友だろ」
その言葉にビクッと俺の全神経が反応する。
ちょっと待て。
なんか聞き捨てならないセリフが聞こえた。
こんなチャラそうな奴が有坂の親友だと。
つか軽々しく有坂をちゃん付けとかすんな。
じとっと目を細めて睨むと、春屋と呼ばれた男は俺に目を留める。
もう一度俺の顔を見て感心したように目を瞬いたが、臆せず口を開いてきた。
珍しい。
「王子様はなんで有坂と仲良いの?一人が好きなワケじゃないんだ」
「…は?」
なんだそれ。
一人が好きな奴なんかいるわけねーだろ。
え、ひょっとして俺そんな噂立ってる?
「おい春屋。結城には構うな」
「ちょー、ありちゃん、俺今王子とお話してるんだけど」
「結城、春屋の言葉には耳を貸すな」
「えっ、酷くない?」
何だコイツら。
なんか俺を差し置いて仲良くねーか。
マジで有坂の親友なのか。
完全に疎外感を感じていたが、春屋は俺に向き直ると人の良さそうな笑顔を浮かべる。
「一人が好きなワケじゃないならさ、俺とも仲良くしてみよっか。王子様」
言いながらまるで紳士のような所作で俺にお辞儀をしてみせる。
コイツ絶対フザけてるだろ。
「俺隣のクラスの春屋蓮斗(はるやれんと)――ハルヤンって呼んでね」
ウインク混じりに自己紹介されたが、そんなことより有坂の親友は俺だ。
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