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『今何してる?』
帰宅後の夜。
風呂から上がってソファで髪をガシガシと拭きながら有坂にメッセを送ってみた。
別に用があるわけじゃないが、せっかく連絡先を交換したんだ。
さっそく使ってみたくなった。
ちなみにあの後ハルヤンとはフツーに話が盛り上がって、暗くならないうちに別れた。
別に有坂が心配するような奴じゃないとは思うが、確かにチャラいところは誤解されやすそうだ。
それにしてもなかなか有坂から返事が返ってこない。
アイツ気付いてないのか。
今送ったばっかだが、リビングのテーブルにスマホを置いてじっと睨めっこする。
「マス、なにしてんの?」
「ああ、アサ兄お帰り。友達からの返事待ってんだよ」
「そんなメンヘラ女子みたいにスマホ見つめてガン待ちする奴初めてみた」
二番目の兄貴に思いっきり不審な目で見られた。
ちなみに俺の兄貴は二人いて、一番上の兄貴が貞男、二番目の兄貴が麻男で末っ子が俺、益男。
三人共金髪に碧眼のイケメンだが、名前は全員揃って終わってる。
「え、俺そんな風に見える?」
「見える。返事来たら秒で返しそう」
「ダメなのか?」
「いやダメじゃないけど――」
アサ兄がそういった時、不意に俺のスマホが音を立てた。
返事が返ってきたのかと思えば、まさかの電話がかかってきた。
有坂だ。
「も、もしもしっ」
飛びついて秒で電話に出る。
アサ兄のじとっとした視線を感じたが、今は兄貴に構ってる暇なんて無い。
『結城か。何かあったのか』
「えっ、何もないよ」
そう答えると有坂は沈黙する。
別にいつものことだ。
それでも有坂の声を聞いたら自然と心が弾む。
不思議だ。
学校でもないのに、こうやって有坂と話が出来るなんて。
「お前が今何してるのかなって単純に気になっただけ。電話が掛かってくるとは思わなかったけど」
『そうか。急用なのかと思った』
「でも声が聞けてすげー嬉しい。あのさ、俺今日ハルヤンと話して――」
そう言って有坂に今日あった出来事を全部話す。
いつも昼休みじゃ伝えきれないことも、電話だったら誰にも何にも邪魔されない。
夕食のメニューからさっき兄貴に茶化されたことまで全て話したが、有坂はちゃんと全部聞いてくれた。
『春屋と友達になったのか』
「おー。言うほど悪いやつじゃなかったぞ」
『そうか』
相変わらず有坂の返事はハルヤンとは違って淡々としたものだったが、俺にはそれでも心地良い。
しばらく話して、というか俺が一方的に話をしていただけだが話し終えると、ふと時間に気付いた。
「あ、悪い。長話しすぎた」
『別にいい』
「また明日学校でな」
『ああ』
そう言って電話を切ろうと思ったが、なんだろう。
初めての友人との電話が予想外に楽しくて、電話を切ってしまうのが勿体なく感じてしまった。
「あ、有坂」
思わず呼び止める。
切れたかと思ったが、少しのあと有坂の声が聞こえた。
『なんだ』
「あー…いや。別にもう何もないんだけど――」
呼び止めておいて何だが言い淀むと、電話越しに小さく漏れた息が聞こえた。
あれ、もしかして俺今また笑い取れた?
『寂しくなったのか』
「あー、そっか。そうかも」
有坂の言葉に納得する。
なるほど、これが寂しいっていうことか。
お祭りの後家に帰ってきた時みたいな心境だ。
『なら今から会いに行こうか』
そう言われてドキリと心臓が跳ねた。
マジで。
来てくれんのかよ。
そしたらもっと、もっとたくさん話が出来る。
昼休みじゃ話しきれないことも、たくさん話せる。
が、さすがにこの時間でそれは悪い。
一応テスト前だし。
「いや、大丈夫。明日も会えるだろ」
『そうだな』
「うん。明日も一緒に昼飯食おう」
『分かった』
そう言って電話は切れた。
有坂の優しさに満足した気持ちで音の無くなった携帯を見つめる。
が、不意に視線に気付いて振り返ると、アサ兄がじとっとした目で俺を見ていた。
「彼女できたの?」と言われたが、一体なんのことだ。
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