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蘇る記憶 < Side冬峰
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家のインターフォンが鳴った。
何かの勧誘かと、おれは、その音を無視した。
幸理なら、インターフォンなど鳴らさずに、家に入ってくる。
でも、気になって、少しだけ玄関を覗いた。
ガチャンっと響く解錠の音に、視線が外せなくなる。
勝手に鍵を空け入ってきた人物に驚いた。
見たことのない大きな男。
するりと滑った男の視線が、背中をゾクリとさせる。
「お前が、冬峰懐里?」
問われた言葉に、おれは、反射的に頷いていた。
「邪魔するぞ。……けっこう良い部屋、住んでんじゃん」
どくん、どくん、どくん…………。
目の前の男の言葉に、心臓が嫌な音を立てる。
「幸理に頼まれたんだよ。あいつも大変だよな~」
キーンと、耳鳴りが頭に響く。
目の前の光景が、昔の記憶と重なる。
「お前、冬峰懐里だろ? Ωなんだってな?」
高校生の頃。
幸理が、あまり部活に顔を出さなくなってから数日過ぎた頃だった。
見知らぬ男が、部室を訪れた。
「けっこう良い部室、当たってんだね」
部室の中を舐め回すように見やる男に、おれは、訝しげな視線を向けた。
ズカズカと歩み寄った男は、すっとおれの頸に鼻先を寄せた。
すんっと小さく嗅がれる感触に、首を竦めた。
「お前のフェロモンってなんかエロいよな」
ふっと嘲笑うような音を立てた男は、顔を離し、嫌みに笑む。
「こんなの撒き散らされたら、βでもおかしくなるよ……」
仕方ないと言わんばかりの声で、納得の表情を浮かべた。
「瀬居も、大変だよなぁ。αでもねぇのに、お前の御守りなんてな?」
同意を求めるように首を傾げた男は、おれの顎を取る。
上げさせられた顔に、きゅっと眉根を寄せる。
訝しむおれに、男は、にたりとした笑みを返した。
「お前が発情する度に、あいつが抱いてんだろ?」
何でもお見通しだと言わんばかりに、男の指が、おれの下唇を滑っていく。
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