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真っ白になる頭
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指先が震える。
意図せずに、身体中が強張る。
約束しただろ?
オレに『おかえり』って言ってくれるってっ。
オレが帰ってくるまでは、ちゃんと生きててくれるって……。
懐里の頬に、オレの指先が沈む。
「……んっ」
苦しげに漏れたのは、懐里の呻き。
今更気付けば、触れている頬も、温かい。
き、救急車っ!
出来るだけそっと、懐里の顔をダイニングテーブルに戻す。
ポケットを探り、スマートフォンを引っ張り出した。
スマートフォンを持つ手が、細かに震える。
「………っ」
救急の番号すら思い出せないほど、オレの頭の中は、真っ白になっていた。
懐里が居なくなるのが怖くて仕方ない。
真っ白な頭に、震える指先は、行動を起こせない。
不安だけが、胸を支配していく。
不安に震えた指先が、スマートフォンを取り零す。
「はっ……、はっ……」
自分の荒い息遣いだけが部屋に響く。
外の雑音に紛れ、救急車のサイレンの音が、耳に刺さり込んできた。
頭を振るったオレは、懐里を横抱きに抱えた。
テーブルの上に放られていた空のシートも掴み、病院へと走った。
病院は、自宅アパートの裏に建っている小さな医院しか思いつかなかった。
2床ほどしかベッドのない小さな内科だ。
オレが風邪を引いた際には、ここで診察を受けていた。
「助けてっ!」
夕方の診療も終わり、扉を施錠しようとしていた白衣の人物に向け叫んだ。
声に視線を向けた若い男…医院を独りで切り盛りする医師の男は、瞳を開き、瞬間的に驚きの表情を見せたが、すぐに中へと通してくれた。
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