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なんだよ、その対価
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肩を落とす男の人に、九良は、焦ったように周りを見回していた。
俺は、なんの相談もなく、スマートフォンを操作した。
数コールの呼び出し音の後、電話の向こうから、間延びした声がする。
「はいよー」
「あ、艶ちゃん?」
俺が電話に向かい放つ声に、2人とも、ちらりと視線を向けた。
「想汰? どしたの」
艶の声に、2人の視線に手を上げ、少しだけ待ってもらえるように、ジェスチャーする。
「人、探して欲しくて……」
俺の言葉に、男が反応し、訝しむように眉根を寄せた。
「良いけど、対価は貰うよ?」
「ぅぐ……」
艶の言葉に、思わず変な声が出た。
艶の求める対価は、いつも、おかしいからだ。
ちらりと男を窺えば、不審がりながらも、その奥には期待が見え隠れする。
ここでやっぱり止めるとは言い難い……。
「わかった。何?」
思わず視線を宙に飛ばした。
「んー……あたしの膝の上で、1時間、抱っこ」
ほら来た。
なんだよ、その対価……。
更に、1時間って…。
「長くない? 1時間とか長すぎじゃない?!」
口を衝く言葉に、艶の機嫌が悪くなる。
「嫌ならいいよ。探さない」
ばっさりと切り落とされる感覚に、俺は唸った。
「ぅー。わか……、ぁ、ちょっと待って」
グサグサと刺さる九良の視線に、返事を保留する。
スマートフォンのマイク部分を手で押さえ、俺は、九良を見上げた。
「あのーですね、従姉…なんだけど、腕の良い探偵さんで、防犯カメラとか使って、人探すの上手いんだ。…たぶん、艶ちゃんなら、見つけられると思うんだ、よね……」
説明しながらも、俺の視線は、盛大に游いだ。
「1時間がどうとかって言ってなかったか?」
凄みのある九良の威圧に、俺は、思わず縮こまる。
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