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私にだって癒しは必要
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小さくなる俺の手を目掛け、男の腕が延びてくる。
スマートフォンを奪おうとする動きに、その腕をぐっと掴んだ九良は、視線で男を一喝した。
「探せるもんなら、探してくれよ!」
腕を捕まれたまま叫ぶ男に、電話の向こうの艶は、反応しない。
「ぇっと…、対価で…、探す代わりに、……あの…」
「さっさと喋れよっ」
一分一秒でも惜しいというように、声を荒げる男に、九良も苛立った。
「想汰に当たるなっ!」
ビリビリと震える空気を断ち切るように、俺も意を決する。
「膝の上で1時間っ」
2人の視線が、ぐさりと刺さり、思わずたじろいだ。
「えーと、……抱っこを要求されました」
居たたまれなくなり、視線を下げる俺に、男も九良も、呆気に取られた顔をする。
「そ、んなこと……? そんな条件で探してもらえるなら、探してもらってくれよっ」
ふっと意識を戻した男の荒ぶる声に、九良は苦虫を噛み潰す。
「ふざけんなっ」
呟いた九良は、男に苛立つ視線を向けた。
「こいつはオレの番だぞ? なんで生け贄みたいに差し出さなきゃいけねぇんだよっ」
「ひどーーーいっ」
電話の向こうから、艶の声が響いた。
全員の視線が、俺のスマートフォンに向く。
俺は、スマートフォンを操作し、スピーカー状態にする。
「生け贄って何さ? 別に取って食おうっていってる訳じゃないんだし、私にだって癒しは必要なのっ」
「癒し……?」
艶の反論に、九良が訝しげな声を放つ。
「そ。癒し。ちょっと抱っこさせて欲しいだけ。なんなら、番? あんたも一緒に来れば良いじゃん。見張っててくれて、問題ないし」
思案するように九良の視線が、ぐらぐらと揺らいだ。
きょろきょろと動いていた九良の視線が止まり、忌まわしげにスマートフォンを睨みつける。
「わかった。頼む」
「りょーかいっ。……写真とかある?」
んふふっと、にやけたような笑い声に続き、真剣なトーンで言葉が紡がれた。
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