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1秒でも早く <Side瀬居
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犬養のスマートフォンに送られてきたメッセージに、オレは、直ぐに走り出していた。
そのまま中へと進もうとしたオレを店員が差し止めた。
「お客様っ!?」
入店の手続きもせずに、入れるわけがなかった。
初めての利用になるオレは、これから必要書類を書かされ、身分証明を見せ、システムの説明も聞かなくてはいけない。
1秒でも早く、懐里を見つけたいのに。
「手続き、オレしとくし。行っていいぞ?」
後ろから声が掛かる。
声の主は、オレの後を追ってきてくれた玄弥だった。
それでいいのかと確認するように、店員へと瞳を向ける。
「ど、…どうぞ」
オレの気迫に負け、店員は、中へと手を向ける。
「悪いっ」
玄弥に簡単な言葉を放ち、オレは、漫画喫茶の中へと足を進めた。
各ブースの前にかけられている番号を追っていく。
“42”の番号を見つけ、上の隙間から中を覗いた。
小さな1人用ブース。
ブースの大半を閉める大きな座椅子の上に、身体を沈め、胸許に何かを抱き締めていた。
「懐里っ」
心配よりも、怒りが勝ってしまう。
放った音は、ほぼ怒声に近かった。
声に驚いた懐里が、オレを見上げた。
視線がぶつかった瞬間に、逃げ出そうとするも、小さなブースの中では、どうにも出来ない。
鍵のないドアを開け、中へと押し込む。
「な……っ」
怒りのままに叫ぼうとするオレの口を、後ろから伸びてきたごつい手が塞いだ。
ぐっと押さえられる感触に、腹立たしさのまま手の主を睨む。
「ここで叫ぶな。目立ってんぞ」
呆れ顔でオレを叱ったのは、玄弥だ。
我に返れば、通路からの冷たい視線が突き刺さる。
オレは、口を塞がれたままに、ブースの入口から引き摺り出された。
オレたちの脇を縫うように、犬養がブースの中へと入っていった。
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