アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
蘇る怒り < Side 近衛
-
「やっぱり、お前が近衛の家を継げ」
端的に告げられた幸理の言葉に、腹が立つ。
「はぁ? 幸兄が継ぐ形で話ついてるんじゃないのかよ? 連絡も来ねぇし、俺はお役御免だと思ってたんだけど?」
想汰からの電話でファミレスに呼び出された。
九良も居るからと、神田も一緒にと言われ、来てみれば、これだ。
その場に想汰は居らず、待っていたのは、九良と幸理だ。
幸理の顔を見た瞬間、踵を返そうかと思ったが、まんまと九良に捕まり、今に至る。
あまり混んでいないファミレスで、客の数も1、2組といったところだ。
4人掛のテーブル席に案内され、幸理と九良が並んで座り、俺と神田は、対面に腰を下ろしていた。
座ってしまえば周りが見えない程度の衝立が置かれ、半個室状態の空間。
それぞれの目の前には、綺麗な四角い氷が浮くアイスコーヒーが鎮座する。
「始めから喧嘩腰で話すなよ。拗れるだろうが」
机を指先でトントンと叩きながら、不機嫌そうに放たれる九良の声。
「なんでオレがお前のストッパー役しなきゃなんねぇんだよ。確かに、力になれることなら協力するって言ったけど……」
疲れたように紡がれる九良の呟きに、幸理は、気持ちを入れ換えるように軽く頭を振るった。
俺の隣から、ふぅっと小さく息を吐く音が聞こえた。
向けた瞳の先、悲しげな雰囲気を纏った神田が、ゆったりと口を開いた。
「僕と別れて、近衛の家に戻って欲しいってコトですよね?」
諦めたように紡がれる言葉に、俺は、絶句した。
瞬間、母親の言葉が蘇る。
『あなたは、αの女性と番になるのっ。優秀な子供を授かって、この家を繁栄させていくのっ』
神田は俺を惑わせ近衛家へ取り入ろうとした浅ましい厄介者だと母は罵った。
蒸し返された苛立ちに、カッと頭に血が上る。
「そんな話なら、聞かねぇからなっ。αの女となんか結婚しねぇっ。俺の番は、神田しかいねぇし、絶対、手放さねぇからなっ」
一気に捲し立てた俺は、無造作にテーブルの上に乗せられていた神田の手を、きゅっと握り、引き寄せた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
147 / 224