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[運命の番]に勝るものなど無い
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「変な目で見るなっ」
抱きつく妃羅に笑みを返していた私の耳許で、小さく囁く帝斗の声。
きょとんとした視線を向ける私に、帝斗は、ギリッと音が聞こえそうなほどに、奥歯を噛み締めた。
「妃羅に変なコトしたら、お前でも許さねぇからな」
髪の隙間から、ギラリと光る帝斗の瞳に、背中に嫌な汗が伝った。
「よしっ、トランプしよ!」
ゆっくりと後退し、部屋の真ん中辺りまで、妃羅に抱きつかれつつ歩く。
妃羅は、楽しそうに、きゃっきゃとはしゃいでいた。
先に腰を下ろした帝斗が口を開いた。
「おいで。妃羅」
胡坐を掻き、腿の上をポンポンっと叩いた。
「や。妃羅は、艶ねぇちゃんと組む!」
ふんっと鼻息荒く言い放つ妃羅に、帝斗はあんぐりと口を開けた。
次の瞬間には、恋敵でも見るように、半端ない殺意の視線で、私を睨みつけていた。
それ以来、私は黒羽家に呼ばれるコトは、なかった。
妃羅のコトを聞けば、あからさまに話を逸らされた。
どう見ても、帝斗のヤキモチだ。
帝斗のシスコンぷりを思い出し、けらけらと笑った。
自分が笑われたと思ったのか、いなされたコトに苛立っていた想汰は、むすっと唇を尖らせる。
「……本心じゃねぇな? 番とウザい兄貴を天秤にかけたら、普通に番、取るだろ」
その家がどんな家柄だろうと、[運命の番]に勝るものなど無い。
そんなコト、私だってわかっている……。
「まぁね」
呟き、思わず真顔になってしまった。
妃羅を襲った悲劇の記憶が、まざまざと蘇る。
私の変化に、九良は、何かを察知したように表情を引き締めた。
「想汰は、天涯孤独でもないし危なくないと思うけど、気を付けるに越したコトはないか……」
妃羅の事件について、話しておいた方が良いと感じた。
卒業するまで番にしないという九良。
大事な想汰に、あいつの手が伸びないとは限らない。
黒羽に制裁を加えられ、そんな気力など疾うに失せているとも思うが……。
とんとんっと想汰の背中を叩く。
終わったのかと、嬉しそうな瞳を向ける想汰に、ソファーを指し示した。
はぁっと、肩を落とした想汰を立たせ、九良の対面のソファーへと移動し、両手を広げた。
渋々と私の腕の中へと収まった想汰に、私は、2年前に起きた妃羅の事件を語り出す。
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