アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
嫌な影
-
10年以上前に1度会ったきりだ。
大人になった妃羅の姿を、私は知らない。
妃羅の容姿を教えてもらい、住居や大学付近の2週間分の監視カメラを漁った。
そこで、嫌な情報を得てしまった。
宇波という男が、妃羅に接触していたのだ。
宇波 統夜(うなみ とうや)。
妃羅と同じ大学に在学中で、1年上の先輩に当たる。
宇波は、要注意人物のαとして、私の耳にも情報が入っていた。
身寄りのないΩを捕まえ、扱いやすいようにと番にし、玩具にして遊び、飽きたら捨てるを繰り返すろくでもないヤツ。
妃羅は、"黒田"という偽名で生活しており、天涯孤独を装っているので、宇波の格好の餌となってしまったのだ。
宇波に誘われ、マンションへと消えて行ったのが、妃羅の最後の足取りだった。
そのマンションの3階に、宇波の部屋があった。
調べれば調べるほどに、妃羅に危機が迫っている気がした。
でも、誘拐されたわけではない。
映像を見る限り、妃羅は、自分の意思でそのマンションへと入っていったのだ。
でも、既に番にされていたら?
宇波が心を入れ替え、相思相愛だったら?
相思相愛で、妃羅が愛されているのなら、私たちが立ち入るべきではない。
……でも、要注意人物として挙げられている宇波だ。
妃羅が、安全だとは思えなかった。
妃羅の場所を教えてしまえば、帝斗は、宇波を悪者と決めつけ、単身で乗り込むだろう。
私は、居場所を押さえ、帝斗に連絡した。
でも、場所は教えずに、その側で落ち合い、私も同行した。
カーキ色のチノパンに、真っ黒なTシャツ、登山にでも行くようなトレッキングシューズ姿の私に対し、帝斗は、真っ黒なスーツに革靴を着用したビジネスマン然とした姿だった。
これから交渉にでも行くかのような姿に、眉根を寄せた。
訝る私に、帝斗はジャケットを捲り、見せてくれた。
腰のベルトに、医療用のメスに似た小型のナイフが、格納されていた。
ナイフの柄が、ギラリとした光を放っていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
161 / 224