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腹底に蠢く怒り
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帝斗に視線を向ければ、吐瀉物を撒き散らし、伸びている宇波の頭を踏みつけていた。
足を離し、しゃがみ込んだ帝斗は、宇波の髪を掴み、ぐっと頭を持ち上げる。
真一文字にナイフを構えた帝斗に、私は叫んだ。
「止めなっ! 番の解消、できなくなるよ!」
真横に走らされてしまえば、そのナイフは的確に、宇波の首をかっ切ってしまう。
番のままに、相手を失えば、Ωはその喪失感から、寂しさから死んでしまう危険も孕んでいる。
ぴたりと動きを止めた帝斗は、酷く冷めた瞳を私へと向けた。
投げ捨てるように宇波の髪を放ち、ゆるりと腰を上げた。
ジャケットを脱ぎつつ近寄った帝斗は、私の腕の中で震える妃羅にそれをかけ、抱き寄せる。
私の足の下で、もぞりと動く物体。
踏みつける私の足を、なんとか外そうと足掻いていた。
「ぐが………ぁっ」
踏みつける足に力を入れた私に、汚い音を放ち、男が呻く。
妃羅の視界を塞ぐように、ぐっと頭を抱き寄せた帝斗は、私の足で固定されている男の頭を、無遠慮に蹴飛ばした。
的確に揺さぶられた頭に、男は、脳震盪を起こし、意識を失う。
「艶。これ、つけろ」
帝斗は、尻のポケットから取り出した灰色のマスクを私に渡した。
意味がわからずに、眉を寄せる私に、言葉を繋ぐ。
「俺のとこで開発したマスクだ。Ωのフェロモンを遮断する。俺は兄妹だから、妃羅のフェロモンの影響は受けない。でも、お前は違うだろ? 念のためだ」
帝斗の言葉に、私は素直に従い、それをつけた。
ベッドから降りた帝斗は、妃羅の手を引き、伸びている宇波の元へと歩む。
私は、ベッドの端に、どかりと腰を落とした。
妃羅は、宇波に背を向け、私と向かい合うように立たされた。
かけられたジャケットをきゅっと握り、俯く妃羅。
宇波の髪を掴んだ帝斗は、吐瀉物で汚れた口を、絨毯の綺麗な部分へと擦りつけ拭う。
「ぃっ………」
荒く拭われる痛みに、宇波は、失っていた意識を引き戻す。
帝斗は、掴んだ髪をそのまま引き上げた。
「解消しろ」
顔を付き合わせ、必要な単語だけを放った帝斗は、そのまま宇波の身体を引き上げた。
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