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借金を返すための選択肢
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数ヶ月の時が過ぎた頃、黒羽家の次期当主、14歳の帝斗が私に目をつけた。
その頃、更なる効能向上を目指している【魅惑の香水】の検体となった。
弱冠13歳で、【魅惑の香水】の土台となる物を開発してしまう帝斗は、αの中でも奇才の域だった。
【魅惑の香水】は、Ωの発情期特有のフェロモンの成分を含む香水だ。
番のいないαは、Ωの発情の香りに逆らえない。
無条件に、興奮を高められてしまう。
フェロモンで誘惑するコトも出来ないβの私は、恰好の的だった。
その香水を纏い、何人に抱かれたかなんて、覚えてはいない。
私は、虐げられるコトに喜べる人間ではない。
でも、男としてのプライドなど、捨てるしかなかった。
『臓器と身体、どっちを売るか選べ』
帝斗から与えられた借金を返すための選択肢。
ここで“臓器”を選択すれば、私は別の場所へと転売され、臓器を切り売りされていただろう。
そこに命の保証など、あるはずもなかった。
プライドと命、どちらを取るかの選択肢しか用意されていなかったのだ。
1年ほど、香水を纏い抱かれるだけの生活を送った。
その後、私は、夏野(なつの)家に送られた。
私は、17歳になっていた。
夏野家の一人息子、縁(ゆかり)は19歳だった。
真っ黒なベリーショートの髪は、爽やかなイメージを与えた。
きゅっと上がった眉尻に、目力の強い瞳は、気の強さをそのまま体現していた。
真っ白なTシャツにジーンズ姿の縁は、どこにでもいるような普通の青年に見えた。
ただαである縁は、黙っていても人を惹きつける魅力を、意図せずに放っていた。
血縁にα性の居ないβの両親から、突発的に生まれたαの男性。
縁の身の回りの世話をするというのは建て前で、本来の私の仕事は精液採取だった。
独り暮らしの縁の家は、平屋の一軒家。
玄関から繋がる廊下の左に2つ、右に1つ、8畳ほどの洋間があり、左の手前が書斎、奥が縁の寝室だった。右側の洋間は、物置部屋として使われていた。
右側の奥は、洗面所、バスルーム、トイレとなっていた。
洗濯機からは、だらしなくバスタオルがはみ出していた。
廊下の先に15畳のリビングに対面式のキッチン。
シンクには、いくつかのグラスが、洗われるのを待っていた。
リビングの横に4畳程度の小さな洋間があり、そこが私、使用人の部屋として与えられた。
シングルベッドの上に、クリーニングから戻ってきたままのビニールに包まれたシーツとタオルケットがあった。
ベッドの横には、小さなテーブルが所在なさげに置かれていた。
最低限の家事はしているらしいが、さほど几帳面ではなかった。
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