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零れる甘い声
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まるで、愛されているかのようだった。
今までの、それとは違う。
縁の視界の中にすら入らない、それとは違う。
帝斗のように、欲望を発散させるためだけのそれとも違う。
縁の愛情が、私に降ってくるようだった。
じわりじわりと、心の中に浸潤してくる。
宙に向けたものではなく。
私に向いた矛先は、抉るように心を煽った。
帝斗の言葉が脳裏を過る。
『縁の匂いもしない。……香水の匂いは染みついてるけどな』
私が欲しいという縁の欲求は、染みついた香水によるものであろうコトは、疑いようがない。
これは決して、私本来の魅力によるものではない……。
その考えは、私を責め立てた。
愛を持って抱かれたコトのない私に、縁のセックスは、心を苦しくさせた。
愛されていると錯覚させられるほどの優しいセックスは、原因のわからない哀しみを胸に広げた。
意識の外で、瞳から涙が零れた。
快楽に狂ったからじゃない。
訳のわからない寂しさが、涙に代わり溢れていた。
零れ冷えた涙に、熱い唇が触れる。
すっと吸い込まれた雫は、縁の唇を濡らした。
困ったような苛立ったような縁の顔が、私を見詰める。
「泣くな」
苛立つ声と共に、縁の親指が、ほろりと流れていく涙を拭う。
「違う…。泣いて、ません」
涙を溢れさせながらも、私はその事実を否定した。
これは、違う。
何が違うのかなんて、わからない。
でも、違うんだ。
瞳を閉じ、顔を逸らせる私に、縁は不服げな息を零した。
諦めたような雰囲気を纏った縁は、涙を拭った右手を滑らせる。
濡れた親指が這った鎖骨が、ひんやりとした感触をもたらす。
冷めたその場所に、ねっとりと這う縁の熱い舌。
一度冷やされた肌に触れる舌は、熱を際立たせた。
「ん………っ」
甘えた声が、喉を押す。
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