アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
響く笑い
-
黒羽の匂いをつけて帰ってくる那須田に、じわじわと胸が焦がされた。
嫉妬しているのか?
自問し、そんな馬鹿な、と自答する。
俺は、その感情を否定し続けていた。
逆に、黒羽の方が、那須田にご執心なのではないかと、結論づけていた。
ジリジリと妬かれる胸に、苛立ちの想いが募っていった。
那須田が家に来て、1年半ほど経った頃。
那須田と黒羽との情事も、相変わらず続いていた。
そんな中、黒羽から、新作の“鎮静剤”の臨床を頼まれた。
黒羽自身もαで自分の身でも試験をしたが、検体は多い方がいいと、俺にも声を掛けてきていた。
治験を受けるという口実で、今回は俺自身が精液を運ぶと告げた。
その言葉に、少し残念そうな顔をする那須田に胸の奥に、モヤモヤとした黒い感情が広がる。
苛立ちを蹴散らすように、俺は、黒羽の元へと向かった。
「ここで働いて、ここで提供してくれれば、“お手伝い”派遣しなくていい分、もっと高く買い取るけど?」
真っ黒な鬱蒼とした髪の隙間から見える瞳を細め、黒羽は、嫌みな笑顔を浮かべる。
黒羽家の長男、帝斗は、まだ16歳だが、次期当主候補として、黒羽製薬で大きな権力を持っていた。
黒羽の提案は、『ここで働き、俺のモルモットになれ』という意図しか見えなかった。
黒羽は、突発的に産まれたαの俺を、検体として調べ、研究したいのだ。
俺はここで、働く気は更々なかった。
モルモットのように扱われるのは、御免だ。
治験自体も最悪だった。
“誘発剤”で強制的に発情期状態としたΩと同じ部屋へと入れられ、俺の興奮状態を計測するものだった。
“鎮静剤”が効かなければ、俺は、Ωに手を出していただろう。
Ωに人としての尊厳など存在しないというような人体実験に、虫唾が走る。
「また、手伝ってくれるよな? 相手のΩが運命の相手なら、お前にくれてやるからさ」
築き上げた地位や生まれ持っての能力で人を判断し、自分より劣っている者を人としては扱わない。
そんな帝斗に、俺の胸はむしゃくしゃとした感情を抱える。
黒羽の言葉を無視し、俺は疑問を口にする。
「なんでΩでもない那須田を抱くんだ?」
問い掛けに、黒羽は、微かに眉根を寄せた。
怪訝な瞳を俺に向け、質問の真意を探ろうとする。
「お前は那須田が、好きなのか?」
ストレートな遠慮のない俺の問いを、黒羽は声高に笑った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
201 / 224