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運命に牙を剥いたって良いんじゃねぇの?
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気落ちしたように、残念そうに放たれる声に、俺は、自分の感覚を言葉にした。
「気持ち悪いってコトは、ないかな。好きって気持ちは、簡単に止められるようなもんじゃないし」
那須田は、瞬間的に驚きの瞳を向けた。
受け入れてもらえないものだと諦めていたのに、不思議なコトなど何もないというような俺の言葉に、感情を露わにした。
俺の返答に、那須田は、許しを得たというように、小さく笑んだ。
「縁は、運命の相手が誰か知っています。でも、結ばれるコトを望んでないんです」
はぁっと、溜め息混じりに空気を吐いた那須田は、言葉を繋ぐ。
「縁の運命の相手は……懐里さんです」
落ち込む心情を表すように、那須田の視線が、ゆるりと落ちた。
「賢理さんは…、世の中の摂理を守るべきだと思いますか? 運命に従うべきだと思いますか? 私と縁、幸理さんと懐里さんを引き離し、縁と懐里さんが結ばれるべきだと思いますか?」
矢継ぎ早に紡がれた問い掛けに、那須田の不安に押し潰されそうな心が露呈する。
「………そんなの、わかんねぇよ」
捨てるように放った俺の声に、那須田は、諦めと納得が綯交ぜられた吐息を零す。
投げ出した訳じゃない。
運命なんて大きなものを、俺がどうこう出来るわけがないから。
落ち込む那須田の姿に、胸が痛む。
「あんたらの未来、俺が口出すことじゃねぇだろ」
傷ついた那須田の瞳が、再びの驚きと共に、俺に向く。
決まり事が、運命が、この世の総てじゃない。
「ただ、定められた運命が総てじゃねぇとは思うよ。それだけが、幸せだとは思わねぇ。運命に牙を剥いたって良いんじゃねぇの?」
俺は運命の、最愛の相手を手に入れるために、両親に牙を向けた。
那須田は、その牙を運命に立てれば良いだけの話だ。
「その彼と懐里さんが[運命の番]なのは、那須田さんと幸兄の運命なのかもな……」
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