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間違い 1
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恋人と別れて三日後の夜
我ながら薄情だと思うけれど、それは確かなものだった。
人々が行き交う往来で一際目を惹き付けるオレンジ色
スーツがしわになることも考えず横断歩道の向こう側まで走った。
パシリ、と乾いた音を鳴らしてその細い腕を掴む。
「好きです。」
「えっと…」
通り過ぎる人々がなんだと遠巻きに見てくる。
けれどなぜだかその時、俺はそんなこと微塵も気にならなかった。
もちろん俺が掴んだ腕の持ち主が
男だってことも
「初めまして、ですよね?」
「あぁ、うん。そうだね。」
俺は初対面で何をやっているのだろう
冷静に考えたらおかしいことだって誰にでもわかるのに
止められなかった。
「こんなことおかしいのかもしれないけど、一目惚れしたみたいなんだ。」
俺の言葉にオレンジ色がピクリ、と反応する。
スラスラと出てくる言葉に本当に自分の言葉なのか疑いたくなる。
元来俺はこういう外れた行動をするタイプではないと自負している。
でも、この時だけは思い違いだったようだ。
「おかしくないですよ。」
「え、」
「おかしくないです。」
大きな猫目が三日月を描いて、柔らかい笑みを浮かべた。
心臓がどくりと大きく鼓動する。
「おにいさん。俺、帰るとこないんです。」
幼くあどけなさが残る顔立ちとは対照的な凛した綺麗な声
「俺のこと、飼ってみませんか?」
オレンジ色がゆっくりと風に靡いた。
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