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間違い 2
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ガチャリと音を立ててあけた扉
中は暗く、よく見えないため慣れたように玄関前の灯りをつける。
廊下を通る時も興味深そうに俺の後ろをついて歩く自分よりも小さな人影
リビングの灯りをつければパッと明るくなる視界
鞄をソファーに置いてネクタイを緩め、上着を脱ぎながら
人影…基、名も知らぬ少年に話しかける。
「家にあるものなら好きに使っていいよ。」
少年はオレンジ色を揺らし、ぱちぱちとその大きな瞳を瞬かせて口を開いた。
「俺が言うのもなんだけど、おにいさん不用心すぎない??」
心配そうに眉根を寄せて首を傾げる少年
…やっぱり可愛いな
「そう?でも、帰る場所がない君にはちょうどいいんじゃない?」
「いや、まあ…そうなんだけど……」
こんな得体の知れない男についてくる君も君だと思うけれど、それよりも俺の方が心配のようだ。
優しいんだな
そこで、あることに気づく
「そういえば名前、聞いてなかったな」
「普通それが一番最初だよね」
ふはっと吹き出して笑う少年に確かに、と納得してしまったのだから言い返せない。
でも、あの時は本当にそれどころじゃなかったんだ。
なぜだか直ぐにこの子に伝えないといけない気がして…
運命ってやつか…?
いや、そんなものあるわけないのにな
らしくない考えにまで至ってしまう
本当にどうかしている。
「俺はニシナ。信じられなければ表札でも見ておいで。普通の会社勤務のサラリーマンだよ。」
「いやいや信じるよ。ニシナさん、ね。堅いな〜うーん……」
「どうした?」
そんなに堅かっただろうか。
ウンウンと唸って首をかしげながら考える少年
すると、突拍子もないことを言い始めた。
「そうだ!せっかく一年あるんだからさ!ニシナさんが俺に名前付けてよっ!」
俺が名前をつける?
楽しそうに笑う少年に今度は俺が首を傾げる番だった。
そう、俺と少年の関係は期限付きだ。
、
家に着く前の帰路、少年は言った。
「おにいさんは俺の事好きって言ってたけど具体的に何がしたいの?」
具体的、そういえば勢いに任せて告白したはいいけれど特にその先のことを考えていなかった。
どうなりたい、か…
少し考えて俺の口から出たのは
「…恋人に、なってほしい?」
「なんで疑問形なの」
クスクスと鈴の音のように鼓膜を揺らす声が酷く心地いい
いや、でも急に恋人というのも良くないのか?
友達から、とか…?
色々と段階をすっ飛ばしすぎて何が正解なのかわからない。
「いいよ。」
一呼吸置いて、少年はまた凛と鳴る鈴のように答える。
「え、」
「でも、条件が1個だけあります!」
「条件…?」
もう言われたことを繰り返すことしか出来ない。
黙って足だけ動かしてその先を待つ
「一年間。おにいさんと恋人でいるのも一緒にいるのも一年間だけ。その間に飽きたらその時点で捨ててくれていいし、家に置いてくれる間は何してもいいよ」
「…」
「もちろん恋人らしいこと、うーん…例えばキスとか、セックスとか?は全然おっけー!その他だと〜…家事はそんなに出来ないけどやってって言うならなんでもするよ」
それは果たして恋人、なんだろうか。
でもそんな提案でも期限付きでもなんでも、一緒にいれるならいいか。
俺はどうしてこの少年と一緒にいたいと思うのだろうか…
自分でも分からない、それでも、手放したくはないんだ。
「じゃあそれで。」
「ほんと?」
「あぁ。でも俺からも1個だけ条件」
「ん?なーに?」
くるくると周りながら歩みを進める。
のらりくらりとする様はまるで猫だ。
「君が嫌だと思うことはしなくていい。」
「…、」
「君がしたいと思うことだけしてくれ。」
パチリ、ゆっくりと瞬きするその姿にも見惚れてしまう
既に重症だ。
「そっか…うん。わかった。」
ゆっくりと噛み締めるように頷いた少年
止められた足に俺も合わせて足を止める。
「じゃあ、一年間よろしくねっ!おにいさん」
差し出された手に自分のものを重ねて俺はゆっくり頷く
「ああ、よろしく。」
、
そんな経路で定めた条件
ちらりと少年の顔を窺えばわくわくと目を輝かせていた。
俺にそんなネーミングセンスなんてないと思うけれど
そうだな、期限付きなら俺も楽しまなきゃ損か
もう一度じっくり少年を見つめる。
「流石にそんなに見られると照れるね〜」
楽しそうな姿は変わらず、目を惹かれるオレンジを揺らした。
オレンジ色、猫っ毛、翠色の猫目、凛とした声
「ミケ」
そう言うと、ぽかんと口を開けて間抜けな顔をする少年
そうだな、やっぱり猫っぽい
昔、近所で可愛がっていた三毛猫にそっくりだ。
「うん、ミケにする。」
「ぶっ、わははっ!ミケ!そっか〜ミケか〜!!ふふっ、お面白いっ!ニシナさん面白いねッ!」
腹を抱えて床で転がり笑うミケ
そんなに笑われると思っていなかったのでこちらの方が驚く
口を開けて大きく笑うミケ
帰り道で見せたクスクスと笑う姿もいいが、こっちの方が素っぽくてもっといいな
でも一瞬
ほんの一瞬だけ俺が確認するように「ミケにする。」と言った瞬間
宝物をのぞくみたいに優しく微笑んだ気がした。
まあ、この笑いっぷりから気の所為だろうけど
「じゃあ、これからよろしくね。ニシナさん」
「あぁ、こちらこそ。ミケ」
「ふふっ」
まだ笑っているミケ
そんなに面白かっただろうか?
俺はこの名前を気に入ってしまったし、もう変える気は無いけど
こうして俺とミケと名付けた不思議な少年の
期限付きの生活が始まった。
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