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間違い 17
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十二月
世はクリスマスなんて謳い文句で
いつもの道はイルミネーションで飾られ
色々な店には赤い服に白い髭をつけたサンタクロースの姿をした従業員や、布製の角がついたフードを被るトナカイの姿をした人で賑わいを見せていた。
ミケを迎えに行ったあの日以来
俺たちは週末に必ずどこかに出かけようと新しい約束を作った。
それは思い出を作るためのもの
ミケが俺とお別れをするために作るものだった。
俺はそれに二つ返事で頷いた。
どんな形でもミケの中に残れるのならばそれでいいと
無理やり、納得した。
それはそうとミケと過ごす時間は俺にとっても特別だ。
ミケと行く場所なら基本的にどこだって楽しかった。
基本的、つまりは例外もあるわけで
猛スピードで降下する車体
「わああああああっ!!」
「…」
、
「ニシナさんっニシナさんっ!さっきの凄かったね!ガーッて!ゴーってなって!お尻ふわって浮いたよ!?」
「そうだな」
ミケは興奮したよにふんすふんすと荒い鼻息をたてながら目を輝かせている。
「次っ!次はあれ乗ろっ!」
「あ、こら走ったら人にぶつかる」
「だーいじょーっわっぷ…」
「言ったそばから…連れがすみません」
「えへへっ」
ミケはよっぽど楽しいらしくいつも以上にニコニコしてはしゃぐ
恋人……というより最早保護者のような目線で見てしまい正直気が気でない。
俺たちが週末の約束をしてから七回目の出かける日
クリスマスには数日早いけれど今日はその名目で遊園地に来ていた。
出掛けるのも体を動かすのも俺は好きだけど
如何せんこういった人の多い場所は色々な人の匂いで少し苦手なのだが、楽しそうなミケをみているとまあ来てよかったななんて思う。
何種類かのジェットコースターに、コーヒーカップ、それからメリーゴーランドまで乗って
二人でふざけて色違いのマスコットキャラクターのカチューシャなんて付けて
俺も存外に浮かれているみたいだ。
そうしているうちに、あっという間に日は暮れて
さっきまで楽しそうに前を歩いていたミケが急に振り返って
ぎゅうっと、俺の腕に自身のそれを絡ませた。
もう暗いとはいえ、ここ外だぞ
さすがに男二人で腕組んで歩くのはまずいんじゃ
なんて思っても俺は振りほどくことが出来ない。
それは、この可愛い恋人のせいなんだけど
「ミケ、歩きずらい」
「だって…」
「ん?」
少しバツの悪そうな顔をして俯いたミケが紡いだ小さな嫉妬
「みんなニシナさん、見てるから」
「!」
確かに楽しんではいたのだろうけど、
きっといつもよりはしゃいでるように見えたのは必死にそれを隠していたから
「俺のなのに…」
またぎゅうっと腕に絡ませられてるそれの力が増した。
なんていじらしいのだろうか
みんな俺なんて見てないのに
見られているのはミケだというのに
本当に可愛いやつだ。
「ミケ、予定変更」
ぐいっとミケの腕を引っ張る。
「え?」
「ジェットコースターじゃなくて、あっちに乗ろう」
俺は夜の遊園地の定番とも言われていて
既に少しの列を作っていたあっち…観覧車を指さした。
、
「お次の方〜、足元にはご注意ください〜!いってらっしゃーい!」
従業員の女性に笑顔で見送られて丸く狭いゴンドラに乗り込んだ。
ゆっくりと上がっていく乗り籠
だんだんと広がっていく景色に狭いこの空間が
まるでこの時だけは世界が俺たちだけで完結しているかのようにさえ思えた。
ミケはガラスの窓に額を擦り付けてまで見ている。
その姿が可愛くて、とても綺麗で
なぜだか無性に泣きたくなった。
「ニシナさんっ!凄いよっ!キラキラ!綺麗!」
「ああ、綺麗だな」
「もうまたそうやってー!ちゃんと見てよ!」
見てるよ。
ちゃんと、ちゃんと俺も見てる。
焼き付けてるんだ、忘れないように
「綺麗だよ」
「だからっ…え、」
振り向いたミケから目を逸らさずに伝える。
自分がこんなキザなこと言えるなんて知らなかった。
「ミケが一番綺麗だ」
正直恥ずかしいくらいだ。
恥ずかしくなる程に、俺はミケに恋している。
暗めの灯りの下でも分かるほどミケの頬が紅葉に染まる。
もう冬だと言うのに秋を思い起こされるそれに手を伸ばした。
「ミケ」
「っ」
「キス、していいか」
近づいた揺れる翠
ずっと見ていたくなる。
ずっとずっと隣で、見ていたくなる。
「ここ、周りから見え見えだよっ」
「ああ。でもしたい」
「っ、今日のニシナさん、変だよ」
そうなのか、自分じゃわからない
でもそれなら俺はミケと出会ってからずっと変だ
「ミケ」
「いつもだったら、場所を考えろ、とかっ」
「ミケ」
「だって、こんなのっ」
「ミケ、嫌?」
「っ、」
力なく首を振る。
でも、と震える唇が紡ぐ音はあまりにいじらしくて愛らしい
「したいっ、けど、恥ずかしいっ…」
なんて顔でなんてことを言うのだろうか
今すぐにでもこの子を奪い去ってしまいたくなる。
全てのものから俺だけの世界に閉じ込めてずっと隣にいたいとさえ
願ってしまう。
「なあ、ミケ。知ってるか?」
「な、にを…」
「観覧車の頂上でキスした恋人たちは永遠に別れないんだってさ」
「っ」
「もうすぐ頂上だ」
あくまで主導権はミケにある。
ミケがしたくないと思うことは俺はしない
そう、出会った日に決めたのだから
ミケにそれを選択させることは酷なことだと分かっていた。
俺たちに永遠がないことも
それでも、俺はミケとならって思ったんだ。
「…運命とか、信じないんじゃないの」
「ん?ああ。正直、ジンクスなんてのも信じてないな」
「ならっ」
「それでも、ミケならって思ったから」
「、」
俺は運命なんて信じない。
だってそんな決められたレールなんてつまらないだろ
物事は全て偶然で、それでいて神秘的であればいい
だから俺は運命なんて信じないけど、それでも、
「なあ、ミケ。俺にキスして」
立ち上がったミケ
ゆっくりと近づいてきて座席の縁に膝を乗せる。
唇が重なる前に見せたミケの瞳は揺れていて
夜景の光を反射させたその翠は、俺の絶対で願望だ。
たった17分間の世界で俺は願う
願わくば、その瞳に永遠を約束したかった。
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