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間違い 21
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ミケは笑う
ミケは泣く
けれど俺が見たいのはその顔じゃなかった。
俺が知りたいのはその感情じゃない
俺は、ミケの激情に触れたかった。
こんな酷いやつでごめん
でも、知りたいんだ。
俺の知らないミケを
俺の知らなかったミケを
見て見ぬふりして置き去りにしてしまった君を
「ミケ」
「カズキさんはっ、ひどいよっ…」
こうやって感情を露わにして泣いてくれるのに
ごめん、と思う反面嬉しいと感じてしまう
ひっ、と呼吸を乱して涙を流すミケ
…綺麗だ
俺は手を伸ばして流れるそれを掬う。
「擦ったら赤くなる」
「しらっ…ないっ!」
パシッ
払われてしまった手を見つめる。
拒否されるのはどんな時でも痛いと感じる。
払われた手ではなく、心臓みたいなところが
「ミケ」
「っ、やっ、んっ…」
キスをしてまた拒否されるも空いた隙間に舌を入れ絡めたら
ミケの抵抗は力をなくす。
「っ、…、」
「ふっ…ん、っは、…ぁ」
ッ、と離れた唇
ミケは肩を震わせていた。
壊れると思った。
ミケが今まで守ってきた一線が
ミケはそれが崩壊する瞬間までもが美しい
「や、めてっ…!こんなっ、慰めみたいなのいらないっ!!」
悲痛
浮かんだ言葉はそれだった。
「ミケ」
「やだっ」
「…ミケ」
「や、だぁっ…」
子供みたいにやだやだを繰り返すミケ
もっと知りたい
俺に残された時間なんてほとんどない
だから、見せてくれ
俺だけの君を
「ミケ」
「やだ、ってば!」
ミケに触れようとする度に拒絶される。
それでもいい、それでもいいから…
「好きだ。」
「っ、」
ビクッ、と大きくミケの肩が揺れる。
「俺はミケの言う通り、ミケの事を忘れるんだと思う。」
「…、」
「ミケの言葉を疑うわけじゃない。でも、確かに俺は覚えてない。ミケと出会う前に好きだった子の名前だって顔だって思い出せない。」
「っ!」
これはきっとミケが言われたくなかったこと
俺に忘れられたという事実が怖くて逃げたと言ったミケ
でも伝えなきゃならないんだ。
「それでも、俺は嬉しかったよ。全部覚えてないけど、またミケと出会えて。好きになれて。ミケの言う通り覚えてない自分にも嫉妬する。辟易するほどに。」
「…」
「でも、やっぱり嬉しいが勝つんだよ。お前との時間が俺には大切なんだ。ミケの話を聞いたからじゃない。初めから期限が決まってたからじゃない。そんなの関係なしにミケといる時間が俺は好きなんだよ」
ミケは涙を流して聞くだけで何も言わなかった。
正直、俺も何言ってるんだかって感じだけど少しでも伝わればいい
「俺、の方が……好きだもんっ」
「うん」
「ずっと、ずっとっ、忘れられなくてっ!俺だけ、忘れられてっ!」
困惑したようにミケは叫ぶ
自分でも分かってないみたいだ。
そんなミケがひどく可哀想で、ひどく可愛い
こんな俺なんかに縛られて身動き取れなくなって悩んで泣いて
俺たち、ちゃんと好き合えてたんだな。
「俺だけ、また、独りだっ!誰も、俺の事を覚えてない!」
「…」
「誰も、俺なんか、見ないっ!知らないっ!」
「…」
違うよ、とか大丈夫とかそんな言葉は言えなくて
俺は口を噤むしかできない。
「……寂しい」
ポツリ、零れた言葉
心臓がギチギチと悲鳴をあげるようだった。
「っ」
「誰にも覚えてもらえない、見てもらえないっ………俺はっ、いる意味なんてあるの?」
ミケの不安は俺にはわからない
どれだけのものを抱えて、諦めてきたのだろう
「あるよ。」
「………んでそんなのわかんのっ!」
だから、伝わってくれ
少しでもいいから
「ミケは、俺に出会うためにいるんだよ」
「っ」
「何度も何度も、俺と出会うために。」
運命なんて言葉で片づけられるのは癪に障るけれど
たぶん、その言葉が一番胸にすんなりと溶ける。
「な、にそれっ…そんなのっ…」
ミケが泣く理由は俺には理解できない。
けれど俺は向き合うしかないんだ
「…無責任っ、自分勝手っ!馬鹿っ!」
「あぁ…」
「ばかぁ〜っ…うぇっ、うぅ…」
「あぁ。」
子供みたいに泣きじゃくるミケ
俺はそっと抱き締めた。
また拒否されるのかと思ったけれどミケは俺の胸に縋って嗚咽を漏らしながら泣いた。
「…すきっ」
「…、」
「好き、なのっ…」
ミケも自分で何言ってるか分からないように泣きじゃくりながら
不格好に顔をぐしゃぐしゃにしてそう言う。
「俺も……俺も好きなんだよ、ミケ。」
「うぇ、う〜…ひっ、うっ、」
「…ははっ、ぐしゃぐしゃ」
溢れる涙を拭ってその瞼に口付ける。
約束みたいな誓いみたいな、キスを
「ん、」
「…しょっぱ」
「そ、れはっ、涙だし、っ、」
「そうだな…」
ミケは落ち着いたのか鼻を啜り少し耳を赤くして俯いた。
「…。」
「…。」
無言、様子を窺おうとミケを見れば目が合った。
ミケもこちらを覗き見るように濡れた瞳が揺れる。
ぱちり、
音が鳴ったかのようにスローモーションで重なる視線
「、」
無意識に伸ばした指先
濡れた唇をなぞれば小さく肩を跳ねさせるミケ
心臓がうるさい
ドクドクと激しく鼓動する。
熱が、巡る
「カズキさっ、んぅっ…」
「っ…、…」
甘い、甘い熱に頭がクラクラする。
好きが溢れるみたいだ。
好きの先はなんだろうか
愛してる?
なんか違う
大好き?
そんな可愛らしい感情じゃない
まだ見つからない
俺はまだ君を想う感情に名前がつけられない
まだ、足りないんだよ
「んっ、ふっ…ぁ、か、ずきさっ…」
「ん、ごめん…なに?」
とんとん、と優しく胸を叩かれる。
唇を離せば肩を上下させながらミケが言う。
「考えごと、っやだ…」
「ん、ごめんな。ミケ、もっかいしよ」
そう言えばミケはまた安心したように目を瞑る。
やっぱり可愛い
「はっ、んっ…ぅ、んっ…」
「…っ、…は、」
「カ、ズキさっ…ん、シよっ、ねっ…っ、シてッ」
眉を八の字にして目を潤ませて
そんな懇願されるみたいにされたら我慢できない。
俺は返事をする代わりにミケの身体を倒した。
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