アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
八話
-
*
「斎藤ちゃんからお呼ばれました!栗栖原葉桜!!ここが綾ちゃんの学校か〜」
「葉桜ちゃん、わざわざ悪いねぇ」
「なんでこうなる」
放課後、事件は起こる。
斎藤に連れられて比較的人の少ない裏門に、何故か葉桜がいた。・・・・・・・・・何故。
理由はわかっている。斎藤が葉桜を呼び出した、それ以外ないのだが問題はそこじゃない。
「なんで俺の疑問を無くすのに葉桜を呼んだ?やっぱり馬鹿なのか?斎藤?」
「ばーかーじゃーなーい!そんなの九条が悩んでるからに決まってるでしょ?ここの裏門に呼び出してるから、例のあの子!」
「は?」
例のあの子、とは。その時だった。
「・・・えーっと、確か・・・斎藤?と九条・・・と誰?」
そこには最近よく見る、金髪碧眼の少年。
「龍城・・・いや、亜澄ちゃん!よく来てくれたね!!」
「あなたが綾ちゃんの初恋の、むぐ!」
「黙れ!葉桜!!」
「・・・とりあえず斎藤、亜澄ちゃんはやめてよ」
なんだか収取がつかない現場になってきた。あいつ、すげぇ困ってんだよ。見えねぇのか、あの青い顔が。亜澄ちゃんって言われた時、すげぇ鬼神みたいな顔してたぞ、おい。
「挨拶遅れてごめんね、私は栗栖原葉桜!」
「昼にも言ったけどおれは斎藤晃司」
「・・・なんで俺を呼び出したの?」
はあ、とため息をつきながら俺も疑問に思っていたことをあいつが尋ねる。
「ここじゃ、ちょっと具合が悪いから、学校近くのファミレス行こー、綾ちゃんの奢りで」
「いや、テメェらが企画したんだろ。斎藤が奢れよ」
「おれぇ?!」
「・・・なんでここに俺はいるんだ?」
あいつの疑問が二人の耳に入ることは無かった。
*
「とりあえず、改めまして・・・栗栖原葉桜です!中学二年生だよ!」
「おれは九条のマブダチの斎藤晃司!!ちなみに同い年だから敬語じゃなくていいよ!」
「はあ・・・」
なんで俺はここに居るのだろうか。
九条の幼なじみを名乗る女の子とマブダチを名乗る人物に、困惑している。いや、困惑というか四面楚歌なのではと思い、手に汗を握っている。龍城亜澄、絶対絶命のピンチである。怖い。パリピ怖い。
「さぁさぁ、なんでも食べて!斎藤ちゃんの奢りだからさ!」
「葉桜ちゃん!ここは割り勘にしてよー、いま金欠なんだって!!」
「葉桜、斎藤・・・騒がしいんだよ。こいつが困惑してるぞ」
よくわからない状況に、いつもなら距離を感じる九条がなんだか普通の思考回路の人間に見えた。そしていつもなら、ありえない。そんな状況に俺の思考回路もパンク寸前だった。パリピはやっぱりこわい。
「お客様、ご注文はお決まりでしょうか?」
やたら騒がしい学生達の軍団に控えめな笑みをこぼして店員が声を掛けてきた。本当に申し訳ない、というかうるさくしてる自覚がある分、とても申し訳ない気持ちがいっぱいだった。
「私コーラ!」
「おれはオレンジジュースで!」
「ブラックコーヒーで」
「・・・・・・俺もブラックコーヒーでお願いします」
ブラックコーヒーという言葉に九条が驚いたように俺を見つめてきた。
「なんだよ?」
「お前、てっきり甘い飲みもん頼むと思った」
「コーヒーはブラックに限るんだよ。特に甘いもの食べる時はね」
「へぇ・・・そうなのか」
九条は俺を甘いものだけ食べるような、偏食人間だと思っていたのか。それはそれでなんとなく不本意である。
甘ければいいというものでは無いのだ。他のやつはしらんがな。
「・・・九条、亜澄ちゃんのことは気になるのね」
「他の人の味覚なんて気にしない綾ちゃんがねぇ・・・本当、あからさまに特別・・・だよね」
「フゥー!」
「恋の香りがするぅ!」
ピンクの葉桜と赤メッシュの斎藤が何かコソコソ話していたけれどなんとなくニヤニヤしてるので怖い。やっぱりこのノリついていけない。やっぱり怖い。九条の周りはこんなやつしか居ないのだろうか?ちょっと心配だ。恋の香りってなんだよ・・・。
「とりあえず本題に入ろう!」
「早く帰りたいから簡潔にお願いします」
「亜澄ちゃん冷たいー」
早く帰りたい。このなんか浮き足立ってるパリピのノリについていけないから本当にまじで早く帰りたい。
「あっちゃんは・・・綾ちゃんの九条綾瀬のことが嫌いなの?」
九条の幼なじみの葉桜が紡いだ言葉に息を飲んだ。なんで、そんなことを、きくのか。
葉桜がじーっと俺の瞳を見透かすかのように見つめてくるのに耐えられなくなった俺は思わず俯いた。俺の様子をみた斎藤が慌てた様子で、優しく声をかけてきた。
「いや待って!責めてるわけじゃないよ!・・・ただ、純粋に九条が悩んでるだよ!亜澄ちゃんの時々見せる悲しそうな顔が気に食わないらしくて・・・なんか笑ってほし、」
「そこまで言えとは言ってねぇ!斎藤!」
「九条のことが、嫌い?」
自分でもよくわからなかった。だって俺と九条はお互いに嫌いあっていたはずだった。でもその関係は姿を変えてしまった。俺は九条はどう思っているのか。わからなくなっていた。
「別に、お前がどう思ってるか知りたいだけで、別に嫌いでもいい。ただ、お前のその悲しそうな顔が気に食わないんだよ、俺は」
九条はそう困った様子で俺を見てそう言葉を零した。俺はどう思っているのだろうか。本当に九条のことが嫌いなのか?
その時だった、九条と昔の友人の姿が重なって見えたのは。
・・・俺はきっと九条と友達になんかなれない。だって俺は九条のことを騙して、嘘を吐いているのだから。本当のことも言わず、ただ上っ面で接しているのだから。俺に正面から誠実に、向き合おうとしている九条に酷いことをしている。
俺のそばにいることで誰かが傷つけられるのならば、また裏切ってしまうのなら。
「俺は・・・」
*
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 15