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十一話
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なんでこんなにもこいつが死ぬのが嫌だと思うのかわからない。
でも今、この瞬間にでもこいつが、消えてしまいそうで、いなくなりそうで、それが恐ろしかった。
抱きしめる力が強くなる。こんなにも細かったのか。こいつの体は。
「死ぬなんて、許さねぇ」
声が震える、らしくないなんて、わかってる。でもそれ以上にこいつが死ぬのが許せなかった。
そんなのただの俺の希望論だ。でも理解なんてしたくなかった。いなくなるのが許せない。でもこいつが生きる理由がないのなら、
「俺のために、生きろ。亜澄」
俺は初めてこいつの、龍城亜澄の名前を呼んだ。
「そ、れはこたえられない、よ」
亜澄は動揺しているのか、受け応えがしどろもどろだった。
「俺の病気は治せないって、もうあと一年しか生きられないんだ、だから」
「んなのてめぇが諦めてるだけかもしんねぇたろ!・・・生きる理由がないんだったら俺がお前の・・・生きる理由になる」
抱きしめていた、身体を少し離すと訳がわからないといった顔で俺を見上げていた。
「なんで、そこまでするんだよ」
心底わからない、理解ができないという顔で俺に問う。
そうだ、俺はお前なんか嫌いだった。でも今はそうじゃない、知ってしまった。こいつが、亜澄が不器用で、感情を表現がすげぇ下手で、お節介で・・・はじめて人に無関心だったはずの俺が興味をもってしまったのは、生きてほしいと思ってしまった。その理由は、
「・・・わかんねぇ」
「わからないのかよ・・・」
「でも、俺は生きてほしいんだよ!お前に、他の誰でもない龍城亜澄に、俺のとなりで」
亜澄の瞳が揺らぐ、亜澄の瞳から、一筋の涙が流れる。
「九条は・・・強引だね」
そういって亜澄は泣きながら、微笑んだ。それは、とてもとても美しい微笑みで、思わず見入ってしまうくらいに綺麗だった。
「・・・そりゃどうも」
なんだか恥ずかしくて俺はそっぽを向いた。
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