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片想いの時間 ~カミングアウト8~
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こんなはずじゃなかったのに
奈緒がありがとうなんて言いながら抱きしめてくれるから声をあげて泣いてしまった。
自分は本当は恵まれてると知っているのにどうしても寂しい。
思ったよりも甘い時間を過ごしてしまって
拓也から初めて自分の存在を求められて少し恋人気分を味わってしまったせいだ。
「オレ、おかしいよね…分かってるよ…気持ち悪いのも」
「私は気持ち悪くない、いっぱい同じ人いる」
「だって…ゲイ…だよ…?」
「光が話たのは私なんだから
私が気持ち悪くないって言ってるんだからいいんだよ
全員に言おうとしてるわけじゃないでしょ?」
「そうだけど…」
「辛いけどさ
好きなら一緒にいたいのは当たり前じゃん
今度は一人で泣かないで私に電話してきなよ
今みたいに思いっきり泣けばいいよ!」
号泣してたはずが
優しくもあっけらかんと普通に話す奈緒のおかげでいつのまにか鼻をすすりながら冷静になっていた。
あれ?あれ?
オレ拓也好きって言っちゃたんだよね?
冷静になればなるほど奈緒の態度がいつも通りで自分が何を言ったか不安になってきた。
「ほら、光タオル目当てときな?」
「うっうん」
「戻って直ぐに顔洗えば暗いし分からないよ
辛いけど直ぐに戻らないと拓にぃがなんで来ないんだろうって来ちゃうかも」
「そうだね…」
奈緒に手を引っ張られてなんとか立ち上がり
やっとポツンと立つ街灯には人が居なくなった。
「おー!光も奈緒と参加してたのかぁ?」
「花火ギリギリだぞー!」
迎えてくれたのは友人だった。
奈緒が話をしてる間に顔を洗って借りているタオルで拭いてる間に
歓声が少し遠くから聞こえた。
花火が上がったんだ…
奈緒が気をつかって追いかけて来てくれた。
「花火…見れる?点火してるの拓にぃだけど」
「大丈夫だよ…オレが選んだやつなんだ
拓也教えてくれたやつでさ?
奈緒、隣にいてくれる?」
「いるよ、一緒に見よう」
「ありがとう」
「光、純愛だね」
「それはないでしょ…」
「恋バナしようね?」
「ふふっありがとう」
またいつもみたく
さっきまで号泣してたクセに今度は嬉しくて笑えて
本当にオレは周り振り回してどうしようもない奴だけど
いつも誰かしら傍にいてくれるのは少なくとも許してもらえているからだろうか…
選んだ花火は本当に綺麗だった。
初めて見るからかもしれないけれど
きっと選ばなくても全部綺麗だったんだろうなぁと分かる。
花火がついたらこんなに明るくなるのかと驚いたけれど
火薬の匂いとか音とか
カラーのフラッシュみたいな光
それが直ぐに終わる物足りなさ
これが花火…
感じたことなかったものがここにあって嬉しい
「オレさ…」
「うん?」
「入学して初めてのこといっぱいあってさ」
「うん」
「花火も入学して初めてみた。
他にも初めてがあったけど拓也が教えてくれてさ
馬鹿にしないで教えてくれて優しいなぁって…」
「好きなっちゃうね」
「それもあるけど…」
「何?」
「人に触れられるだけで生きてるなぁって」
「いきなりエロいれないの!」
カミングアウトでは全然驚いてなかったくせに
別にエロなんて意識してない発言に驚いて頭を軽く叩かれた。
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