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両想いの時間 〜最初の一歩5〜
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拓也が袖をゆっくり捲くっていく。
今度は抵抗なんかしないで 拓也がすることをじっとみつめていた。
何を言われるか思われるか怖かったけれど
もう隠すことは出来ないから一掃の事思いっきりまくって欲しいとも思った。
捲り上げられた腕は
あの日、誰にも見られないように拓也が隠して気にかけてくれた傷が露わになる。
それに加えられた新しい火傷
赤くただれたもう戻ることのない丸く形をなす皮膚
何故かオレより辛そうに顔を歪めた拓也が
その痕をくぎ付けになっているように見つめる。
傷痕を見つめる目線に緊張する。
汚い肌をどう思う?
気持ち悪い?
拓也の顔がゆっくりと下がってくる。
黙ったまま優しく
その傷痕に口付けをした。
目が離せなかった。
信じられなかった。
チュッと小さなリップ音がして顔をあげた拓也がすごくすごく優しい顔で笑う。
「痛かったな…光……」
そう言われたらやっぱり涙が出る。
新しく焼印だと押し付けられたタバコ痛くも熱くもなかった。
好きな人が笑って吸うタバコを思い出していたから
今もするほのかなタバコの香り
どこか安心する香りで拓也を思い出させてくれていたから
殴られている時もそうだ
これが終われば明日は拓也に会えると思って頑張れた。
でも今日は違った。
久しぶりに顔をやられた瞬間
やっと明日から拓也に会えるのに会えないと思った。
傷を隠してる以上、顔をやられたらどうすることも出来ない。
初めて抵抗してそのまま逃げ出した。
会いたい、会えないのは嫌だと必死だった。
「言っちまえ…」
「な…に…?」
声が震える。
少しでも涙をこぼしたくはなかった。
「ずっと…言いたかったこと…
一緒に苦しんでやっから
さらけ出して縋ってこい」
その言葉にオレの今まで頑張ってきた何かが引きちぎれた。
縋っていいのだろうか?
背負わせていいのだろうか?
そんな迷いはなくなった。
ただ今まで言いたかった
助けての言葉…やっと届くとしたら
「そしたら…俺…お前と一緒にいられる」
これは夢なのかもしれない。
オレが愛されるわけがない。
でも…求めていいのなら…
「助け…て…ほしい…」
「うん…」
「…」
「好きだよ…」
「……拓…?」
拓也が泣いていた。
泣いて薄っすら笑っていて
ゆっくり優しくオレの腕を触る。
「俺がいるよ光…」
「でも……」
「俺のものになっちまえよ…」
その瞬間、腕を思いっきり引っ張られて抱き込まれる。
痛いけど温かい
求めていた抱擁だった。
あぁ…拓也の香りだ。
冷やしていた氷の袋が落ちて床を濡らすのに拓也は気にしていなかった。
「ひかる……」
求めていた優しい声。
嵐みたいな激しい打撃に身体を縮こませている間
ずっと、ずっと考えてた。
自分を励ましていた。
これが止んだら、会いに行こう
今日は…今日は抱きしめてってお願いしよう
傷を見せて…抱きしめてって…
激しい罵声に耐えてる間
ずっと、ずっと違う声を聞いていた
拓也がオレにくれた言葉
拓也がオレを呼ぶ声
それが今やっと叶えてもらえて我慢が限界にきた
拓也にしがみついた
傷口がまた開いて拓也の服を汚してしまう
でも、めいいっぱい顔を胸に擦りつけて
拓也の香りと温もりと優しい声にどっぷり浸って…
声に出して泣いて泣いて安心したかった
「ひかる…ひかる…」
もっと呼んで
好きって言ってくれるなら…
疲れたらまた癒してくれる?
巻き込んでごめんなさい
でも、そしたらオレ
また頑張れるから耐えられるから
何がなんでも生きたいと思える。
「オレも……拓が好きッッ」
「うん…」
「すきッッ…好きなの…」
「うん…」
「ずっと一緒いたい…
もう痛いのは嫌だ…
傍にいたい…怖い…ずっと怖くて痛かった
ここにいたい…」
「いればいいよ…ずっと…」
子供の頃
夜、神様に早く助けに来てと泣いた日がただあった。
早く、早くって…
でも神様なんていなかった。
助けてくれたのは神様なんかじゃなかった。
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