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両想いの時間〜最初の一歩6〜
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どれくらい泣いて抱きしめてもらっていたのか分からない。
落ち着く頃には殴られた跡がズキズキ痛むくらい正気になってきた。
抱きつく腕を緩めてソロりと身体を身じろぐと
拓也も気づいて身体を離してくれた。
「とりあえず手当しような?」
「うん…痛い…」
「痛いな…」
泣き疲れをしているのにスッキリしていた。
今まで言えなかったこと、隠さなきゃいけなかったことを言って受け入れてもらえることに身体が軽くなっていた。
こんな日が来るとは思わなかった。
まだ実感が湧かないのに安堵感にみたされる。
痛いと言える。
助けてと言える。
「こればっかは腫れがひかないと…
冷やすことしかできないな」
「大丈夫…分かってる。
この後、真っ黒になっちゃうけど…」
「そうか…」
「あ…オレいつもこの後に熱出ちゃう…」
「そうか…」
拓也の寄せられる眉毛が戻らないのが不安になる。
なんでそんなに今だに辛そうなのか
居た堪れなくて何か話さないと
と思っていると拓也の真っ白なシャツに擦れた血の跡が目に入った。
「服…ごめん…血着いちゃってる」
拓也がオレの手を握って声を震わせてきた。
「光、殴られた怪我を把握してるのも
その後自分がどうなるか分かるのも
本当はおかしいことなんだよ
血がつくことなんか気にしなくていいんだよ」
「……」
「当たり前に言うお前が…切ないよ…
ごめんな?辛いのはお前なのに俺は1mmも分かってやれない
普通に学校に来て笑ってるお前がどんな気持ちで生きてたかなんて
きっとこれっぽちも分かってやれない
嬉しくて嬉しくて子供みたいに
あれだけ泣いたのに
やっと落ち着いたはずだったのに
また声に出して泣いてしまう。
自分を理解しようとしてくれて
それを思って泣いてくれる人なんて考えたこともなかった。
自分は寄り添いたいと思ってもらえる存在なんだと…
自分はちゃんと存在していいと言われた気がした。
「ありがとう…本当に…ありがとう…」
ありがとうしか言えないのが悔しい。
ありがとうじゃ足りないのに
拓也が項垂れて泣く。
時々、唸るような声が聞こえる。
拓也がオレのことを思って泣いてくれてるのが嬉しくて
拓也にぴったり引っ付いて甘えてみた
顔上げないまま手だけがオレの頭を引き寄せて撫でてくれた。
ずっと待ってた優しい大きな手にうっとりして目を閉じる。
じんわり感じる拓也の温かさに少しだけ落ちつく
嬉しさと安堵
「充分だよ…オレ拓也に守られてた
オレ…ずっと…明日は拓也に…
会えるって頑張れてたんだ
罵声だって…拓也の優しい声思い出してた…
殺されてたまるかって強くなったから」
泣いて上手く声が出せない。
たどたどしくしか言えないけど伝えたかった。
「お前…本当に…」
顔を上げた拓也が鼻をすすりながらオレのぐしゃぐしゃな顔を拭いてくれた。
「…手当てはいいから…
もう一回…抱きしめて…欲しいなぁなんて…」
子供みたいに甘えてしまう。
あー…またか…と思ってやられるがままの毎日のことに
今更、なんか身体が震えて怖くて痛くなってきた。
温もりが欲しい。
「おいで…」
拓也が撫でてくれていた手を止めたのと同時に
ソファーにもたれ掛かる拓也に正面から抱きついてみた。
拓也はそんなオレの腰を持ち上げて膝に乗せてくれて
拓也の鼓動がはっきり聞こえるくらい空気なんか入り込めないほど抱きしめてくれた。
お互い何も喋らないで
言葉を忘れたようにひたすら抱き合ってた。
静まり返ってる部屋に拓也の鼓動と息遣いしか聞こえなくて心地よすぎて夢なんじゃないかと現実味が今だにしない。
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