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離れた唇が途端に寂しくなって、ニアの姿が見えなくなってからも微かに残る熱の場所を抑える。
不安しかなかった生活は、心地よくてニアが与えてくれる幸せで全部塗り替えられる。
殺風景だった新しい2人の部屋に、2人のものが増えていくのが嬉しい。
ーー3人になっても、ニアは僕のこと愛してくれるかな。
ニアに噛まれればオメガのフェロモンの分泌も弱まるはずだ。
それは同時に自分への執着も薄れるということになる。
幸せを築いている番もいる一方で、裏切られて一生の傷を負ったオメガもいるのだ。
1人でいるときは悲しい話ばかり思いつく。
軽く身支度を整えて、実晴も気晴らしに外へ出かけた。
厳しい冬の寒波は過ぎて、季節は春に移ろう途中だ。
薄手のコートを羽織った実晴は、久し振りに街へと足を伸ばした。
獣人の数は増えたとはいえど、まだまだ少数で耳や尻尾を帽子で隠している者もいるし、あまり獣人と人間が親しそうにしている光景には出くわさない。
ニアの大好物であるツナ缶と日用品を買い足して、実晴は早めに帰ろうとした。
「あ……」
2メートル近くある長身の獣人が目に留まり、実晴は慌てて踵を返し、別の帰路を選ぼうとした。
しかし、いち早く実晴の存在に気がついた相手に、コートの襟を掴んで捕らえられる。
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