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……ーーーー。
いつもは家族の賑やかな声に誘われて、ご飯の時間になると自然と身体が起きるはずなのに、家族は誰もいない。
毛布の上でぐーっと伸びをした後、再び眠りに落ちようとした。
「春樹[ハルキ]。いつまでも寝てないで起きなさい」
母親らしい女の人の声とともに、向かいの開かずの窓が開け放たれる。
隣からの照明が差し込み、多少明るくなった部屋の中できょろきょろと辺りを見回した。
家の家具のほとんどはなくなっていて、窓を遮るカーテンも取り払われていた。
「お熱が下がったのなら、宿題を片付けてしまいなさいね。休んだ分、みんなよりお勉強が遅れているんだから」
春樹と呼ばれた少年は、間の延びた返事を繰り返してベッドから降りる。
「あれ……? 今日は静かだ」
「お隣さん、やっと引っ越したみたいなのよ。1日中騒がしかったからよかったわ。あの煩い猫の声も、これで聞かなくて済むようになるわね」
ーーお引っ越し? うちの家族が?
確かに人の気配が一切しないのだ。
1日3回のご飯も用意されていなくて、自分用のお皿は空っぽのままだ。
以前に一緒に遊んだ野良が話していたことを思い出す。
『家族や主人だと思っていた人間は、忽然と姿を消すことがある。それを捨てられたって言うんだよ』
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