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「俺のママ、ペット嫌いだから、部屋では鳴いちゃダメだからな」
僕がもう鳴かないと分かると、春樹は身体の隅々まで撫でてくれる。
子供の小さな手が気持ちよくて、頭を擦りつける。
耳の裏と肉球を触られるのが心地よくて、春樹にごろごろとお腹を晒して甘える。
いつの間にか春樹のパジャマは、白い抜け毛が引っついていた。
「俺は春樹って名前なんだ。お前は何ていうの?」
もちろん猫なのでにゃあ、としか答えられない。
春樹の手が首周りを探っているけれど、残念ながら名前つきの首輪はつけられていない。
春樹は本棚から分厚い本を取り出して、挿し絵の載ったページを開く。
登下校中の小学生の間で流行りのファンタジー小説……勇者一行が平和を取り戻すために悪と闘う物語だ。
勇者の1番のお供は人の言葉を喋るニアという名前のシャム猫で、旅の知恵を貸すのだ。
「じゃあ、俺が名前つけていい? 今日からお前はニアな」
ーーニア。素敵な名前だ。
ファンタジー小説と同じシャム猫の僕は、ニアという新しい名前をもらった。
前のご主人はたまにしか名前を呼ばないから、何という名前なのか忘れてしまった。
新しい名前が気に入ったので、ニアは春樹の頬をぺろぺろと舐める。
春樹もお返しとばかりに毛の流れを無視して、ニアの全身を雑に撫でた。
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