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ーーニアにとって春樹は人生の全部だ。それなのに、春樹はニアがいても、もっと楽しいことをしたいんだ……。
ニアはぷいとそっぽを向くと、春樹の手の届かない本棚の上へ登った。
「何だよ。猫ってやっぱり気まぐれだなぁ」
構ってくれないとやっぱり寂しくなって、勉強をし始めた春樹の机に飛び移る。
ノートの上でゆらゆらと尻尾を揺らめかせては、手で退けられた。
「もー……後で遊んでやるから」
ひょいと抱き上げられて春樹の膝の上に着地する。
たった6畳の部屋の中でも、春樹がいれば幸せだった。
野良の中には、家で飼われる猫は広い外の世界を知らないからかわいそうだ、と馬鹿にされた経験もある。
ーーそれでもニアはずっと春樹の側にいるんだ。
突然の別れが来たのは、春樹に拾われて1ヶ月も経っていない日のことだった。
久しぶりに学校に行った春樹は、放課後にサッカーの練習に誘われたらしく、玄関先でママと何やら言い争っていた。
「別の子と遊びなさい。無茶をして倒れたりでもしたらどうするの。お医者さんにも運動は止められているでしょう!?」
「だったら……ママがもっと俺を強い身体に生めばよかっただろ!」
春樹も取り返しのつかないことを言ってしまったと自覚して、はっと口をつぐむ。
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