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「……あれ、何で、泣いてるんだろう……僕……」
姿が見えなくなっただけで、真っ暗闇に突き落とされたみたいに不安になる。
オメガの性をなじられるばかりで、生きていても死んでいるみたいだった人生。
辛いことと幸せなことが半分ずつあるというのなら、きっとこれからは……。
「ニアも、きっとこれからは幸せばかりだね」
運命の相手の幸せを願う言葉が、自然と口から溢れる。
パンの焼ける香ばしい匂いとコーヒーの香りが近づいてきて、実晴は上体を起こして伸びをした。
ニアの名前の一部をもらって、実晴はニアの隣で生きていくのだ。
「……あのね、ニア。素敵な名前をくれて、ありがとう。……僕に、生きる意味を与えてくれて、ありがとう」
「どうしたの。急に。何か実晴らしくないよ」
「何か、急に言いたくなったから」
都市伝説なんかじゃなくて、ニアはきっと夢の物語の中で生まれたのだ。
何て素敵な運命なのだろう。
カーテン越しの朝焼けが、実晴の濡れた頬に反射して煌めいた。
fin.
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