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ケース2:不良(ただのシャイボーイ) 後編
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放課後、丹下が一緒に帰ろうと言うので揃って教室を出た。
森光は女の子が迎えに来て先に帰った、犬のウ〇コでも踏め。
彰嗣はバレー部の助っ人だって、これは丹下に聞いた。
大体帰りは丹下と二人である。
「荒ぶってましたぞ、村地氏」
「…へぇ」
「俺のハニーはシャイだからしょうがないなー今夜は覚悟しておいてもらおうかな!ってでろでろの笑顔振りまいて森光に飲むヨーグルトを顔射されてました、ちょっと嬉しそうだった…」
「…帰ったら戸締り確認するわ」
怒ってはいないようだが、気持ち悪さに拍車がかかってる。
背筋に冷たいものが走り、身震いしてしまった。
森光の気持ちを察するとウ〇コ踏めなんて思ってごめんとちょっと思った。
ちょっとな、靴に掠れくらいには思ってる、イケメン滅びろ。
イケメンと言えば。
「なぁ、丹下」
「何ですか」
「あのさ、金獅子様っているじゃん?」
「学園都市最強の不良ですな」
「学園都市じゃなくてここらで最強の不良な」
お前は何故ここを二次元にしたいんだ、俺もお前も科学も魔術も操れないぞ。
異世界に飛び込めるなら俺は迷わず女の子に愛される世界に飛び込む。
「それで、その金獅子が如何した」
「いや、今日屋上で会ってさ…」
「まさか、昼休みですか?」
「うん、いるの知らなくてさ…で、あいつって名前何だったっけ?」
「知らなくてって…屋上は金獅子のテリトリーですけど、周知のことですよ、知らないてどんだけですか」
呆れかえって額を手で覆う丹下の中二病がかった仕草にイラッとしつつ、そうでなくてあいつの名前、って言いながら昇降口までやってきたのだが。
すごい人だかりと騒めきに言葉が途切れ、顔を見合わせてしまう。
「何だろ?」
「とうとう俺の嫁が地上に舞い降りたか」
「お前が画面の向こうへ行ってしまえ」
真顔で何を言ってるんだこの男は。
顔はいいのに本当に残念だ、お前を見てキャッキャしてるそこの女子に謝れ。
半眼の俺に可愛い顔が台無しです、と頬を突っつきながらひょろ長い体で人垣の先を覗いてる。
背が高いっていいよね、俺に分けろマジで切実に。
「杉田氏の御所望の人ですよ」
「は?御所望?…Eカップ金髪美女?」
「…ま、ある意味Eカップ金髪美人ですね」
マジで!?
思わず人垣をかき分けて前に向かう。
Eカップ金髪美女!
Eカップ金髪美女!!
「…ぁ、」
「…ぇ?」
ある意味巨乳だよ。
確かに金髪だよ。
「美女じゃねぇじゃねぇか丹下!!」
「上官!自分は美女とは言っておりません!美人と申し上げました!」
上官のききまつがえであります!と敬礼する丹下。
畜生、やられた…!!
目先の欲に目が眩んだ…
胸板であって巨乳じゃねぇ…
「くそ、Eカップ…」
「そっちを取るんですか、男子高校生ですね」
「…おい、」
二文字だけど良い声だな。
耳元で喋られたらきっと女の子は腰砕けだ。
証拠に周りの女子がくねくねしてる、桃色吐息まで…
「…杉田氏、杉田氏杉田氏杉田氏杉田氏!!戻って来てください!めっちゃ睨んでます!!メンチギリギリで自分の心臓がギリギリです!!!」
左肩がめっちゃ痛い。
あ、痛いすごく痛い、丹下がすっごい叩いてる。
「痛い痛い、何何何、めっちゃ痛い」
「杉田氏、金獅子がすんごい目で見てるってば俺このままゴーゴーヘブンしそう」
「あ?金獅子?」
俺の肩を掴んでる手が震えてる。
恐怖で震えて力入ってる、痛いってば。
丹下の手を叩き落として、金髪美人もとい金獅子を見る。
「お、おぉう…」
確かにめっちゃ睨んでる、何だあの目は。
昼の犬のような猫のような目はどうしたんだい。
恐いわ金獅子だわ不良だわ。
鼻の絆創膏さえも凶器だわ。
お陰で集ってた奴らが退散したわ。
「…杉田氏、話しかけてくださいよ」
「は!?何て俺が?」
「だってさっき杉田氏に呼び掛けてたし…無視したの杉田氏だし」
「…」
こそこそと会話を交わし、そっと窺うように金獅子を見る。
何でだ、さっきよりも威圧感が増している。
彼を中心に闇が広がりそうな、暗黒神なのか。
「あ、あれに話しかけるの?瘴気にあてられない?」
「…俺に言えることはイージスの盾を装備しろとしか」
「それどこで手に入る?3000円で買える?」
「おい、」
「は、はいぃッ!!?」
悪ふざけが過ぎたようだ…!!
地を這うような声とはこのことか。
地獄の底から出てきた化け物だ。
金髪もグリーンの目も天使の持ち物かと思っていたのに。
とんでもない勘違いだ。
グングニルの槍も必要かこれ、5000円で買えるか?
「…お前、」
「昼間はごめんなさい!出過ぎたマネしました調子こいですいませんっ!!誰にも言いませんから許してお願い痛いのは嫌なんですぅッ!!!」
「…」
土下座したい、でもできない。
だって金獅子が俺の肩を掴んでるから。
え、なにこれすっげみられてる。
平仮名になるのはあれだ、察してくれ。
見てるよ、金獅子が俺をじっと見つめてる。
あの綺麗な瞳に不細工な俺の顔が映ってる。
「…真智」
「…ぇ?」
めっちゃいい声が名前を呼んだ。
俺の名前を金獅子が呼んだ。
何で俺の名前知ってるの?
金獅子はそんな俺の疑問を他所に、俺の手を取って。
ギュッと、大事そうに両手で包んだ。
「…ごめん、」
そう言えば振り払われた時にアクセサリー当たったんだっけ。
少しうっ血してる程度で大したことないのに。
悲しそうな顔で俺の手を見つめて。
それから俺の手に唇を寄せて、触れる程度だけど。
唇を傷痕にくっつけた。
「!!?」
俺も丹下も絶句だ。
丹下の二次元にしか開かないあの目が大きく開いてる。
俺も硬直して振りほどくとか何もできない。
耳元で、何度も優しく名前を呼ぶ。
そこで抱きしめられていることに気付いたけど。
甘えを感じさせる低く掠れた声。
鼻をくすぐる香水の香り。
眩暈がしそう。
何で抱きしめられてるの、俺。
「…幼馴染の次は最強の不良を落とすて…何のBLゲームですか、杉田氏」
スマホで写真を撮りながら、丹下が生温い目で呟いた言葉は俺の悲劇を予言しているようでした。
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