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最強の不良じゃないんすか? 球技大会3
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保健室に行くと養護教諭が机に向かっていて何か書き物してた。
「あら、怪我でもした?」
「いえ、あの…さっき二年の奴運ばれてきませんでした?」
「…あぁ、サッカー出てた不良君ね、奥のベッドで寝てるわよ」
「あ…そうっすか」
奥のベッドに向かいカーテンを控えめに開ける。
ちょっと覗くと横向きで寝かされてる金獅子の後頭部に氷嚢が当てられている。
顔の方は見えないから意識あるのかはわからない。
「意識は大丈夫よ、しっかりしてたから。一瞬飛んだだけみたい」
「…よかった」
ほっと息を漏らすと先生はふふ、と優しく笑った。
それから、ちょっと用事があるので席を外すからと保健室を出て行ってしまった。
これってもしかしてまさかのお留守番ですか。
試合、間に合わないよね。
仕方ないから丹下にメール。
“養護教諭に留守番言われた、代わりに試合出ろ”
したら、すぐに返信。
“そ、そんなー!?(;´Д`)あ、試合負けましたよサッカー(´・ω・`)”
何ということだ、結局俺の羞恥心も金獅子の痛い思いも無駄だったと…
すげぇ虚しいではないか。
舌打ちをしつつ、金獅子のいるベッドに再度近づいて今度は顔の向いている方に回る。
傍にある椅子に座ると長い睫毛の伏せられた端正な顔がよく見える。
「…ごめんな、俺のせいだよな」
呟いても聞こえてないんだけど。
眉間に寄った皺は痛みのせいなのか癖なのか。
痛みだったら申し訳ない。
前髪を退かすように指で払うと、眉がピクリと動く。
あ、と思ってると瞼が震えて。
綺麗な緑色の瞳が少しずつ見えてくる。
ぼんやり、状況を認識できてない双眸。
「気分、どう?」
「…ん、」
「気持ち悪いとか、すげぇ痛むとか、ないか?」
「…ぃ、じょ…ぶ」
舌っ足らずな掠れた声。
ゆっくりと瞬きをして、少しずつ状況を把握し始める。
「……真、智…?」
「おう、真智君ですよ」
寝たままの金獅子に目線を合わせるようにベッドサイドにしゃがみこむ。
瞬きを繰り返す金獅子が俺を見てる。
何だか小さい子供みたいで笑える。
「…ごめんな、」
「…ぇ、」
「俺が声かけたから吃驚したんだよな?ごめんな」
そっと後頭部に手を伸ばして氷嚢を退かして患部にそっと触れる。
ビクリとする金獅子、ベッドサイドから立ち上がって手をつくとその後頭部を覗き込む。
覆いかぶさるような格好になってるなーと思わんでもないが致し方ない。
「わ、たんこぶ出来てるな…痛い、よな?」
ちらっと顔を見ると固まったように動かないでただ顔が真っ赤で。
そっと氷嚢を戻すとまたビクリと震えて。
それから俺が体を起こそうとしたのだが。
「…おい?」
俺の腰に金獅子の両腕が巻き付いて。
抱き付くようにされてしまう。
あの、そこはどうなんですかね。
ちょっとずれると危険な位置にお顔がきてしまう…
「…真智、有り難う」
「は?」
「…応援してくれて」
「え?いや、あれは…」
森光達の悪ふざけに乗っただけで、とか言える雰囲気じゃなくねぇか。
本当のこと言ったらタコ殴りされるかな。
殴られたことねぇけど、こいつに。
「敵だから、絶対してくれないと思ってた…嘘でも嬉しかった」
「…お前、」
「でも、驚きすぎて俺、こけたし…マジだっせぇ」
きゅっと腰を抱く力が強まる。
やめて俺のあれにお前の顔が近いです。
焦る俺に気付くわけもない金獅子様はそのまま顔を押し付けてくる。
いやいやいや!!!
「ちょ、待って!?顔の位置危ないですから、離れろください!!」
「嫌だ」
「嫌だじゃないのお前頭打ったんだから安静だろ!?動くなよ」
「…じゃあ、」
不満げに俺の腰から離れた金獅子にほっとしたのだが。
ぐいっと引っ張られて驚いてる間に何でかベッドに寝転がってる自分がいて。
腰とか首のあたりに金獅子の逞しい腕が回ってて、ちょっと汗臭い胸板が目の前にあって。
どういうことだこれは。
暑いし、熱いのだが。
「ちょ、おい!!?」
「少しの間でいいから…」
「はぁ!?ふざけ、」
「真智のせいで頭打った」
「…ぐ、」
それを言われると何も言い返せないではないか。
黙った俺にふ、と笑って、そっと髪を撫ぜる。
くすぐったくて気持ちいい指。
寝てしまいそうではないか。
…試合は丹下に任せたし、いっか。
微睡みかけた目を少しだけこじ開けると金獅子が蕩けそうな笑みで俺を見てる。
何だよこいつ、こんな顔もできるのか。
眉間のしわなくなってんじゃん。
「…やっぱカッコイイのな、お前って」
ぽろりと言った言葉はあんまり意識してなかった。
後頭部の氷嚢を直してやりながら、俺は眠気に負けてしまった。
「…ッ、真智…?」
とろん、と眠そうな顔でとんでもなく嬉しい言葉を言ってくれた真智。
伸ばされた手は氷嚢に触れた後、そのまま力尽きた。
まるで首に巻き付けられたようにして。
初めて、真智からの抱擁を受けているようなそんな錯覚。
少し動けば唇が奪える距離に可愛い寝顔がある。
一瞬邪な考えが過ったが、後頭部に触れる氷嚢が引き止める。
真智が心配してくれて直してくれた氷嚢、まずはこのたんこぶをちゃんと治すべきだ。
きっとこれが治るまで真智は心配する、あの時の俺のように。
そう思って、少し可笑しくなった。
今度は俺がか。
「真智、好きだよ」
前髪を梳いて、額に唇を落とした。
ちょっと動くくらいは許してくれ。
そっと真智を抱きしめて、俺も瞼を下した。
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