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やらかしたっぽいので俺は逃げる。(幼馴染と後輩と)
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「どーゆーこと」
「俺に聞かれても困りますよぉ」
第二体育館。
女ばっかのギャラリーの中に俺と朔太郎。
まりあちゃんは女子の群れの中でギャーギャーと奇声…否、歓声を上げている。
彼女の視線の先は言わずもがな、彰嗣である。
むしろ、彼女たちの視線の先というべきか…
「本当に何であんなのがモテるのかね、顔なの?顔がいけないの?」
「むしろ顔がいいんですけどね、村地先輩は」
「揚げ足とんな、可愛くねぇな」
さっきから活躍しまくってる彰嗣。
やってる競技がフットサルとか。
普通にかっこよいに決まっている、顔面セーブして鼻血出せ。
そもそも何故俺がこんな面白くもない現場にいるのかというと、彰嗣に連行されたからだ。
正直、いつも通りまっすぐ帰ると金獅子に遭遇するので有り難く思った気持ちもある。
絶対思い出して恥ずかしくなるのわかってるし。
そう思いながら女子の群れを眺めていたら今度は目敏い朔太郎に捕まったと。
朔太郎はまりあちゃんに捕まったそうで、ぼっちヤダから先輩一緒にいてって…可愛くないくせに可愛いお願いしてきた。
後輩に優しい俺は仕方ないのでいることにしたわけだが。
「人がキャーキャー言われてるのは面白くないな」
憎しみが増すだけだ。
フットサルクラブのリーダーもイケメンで、ちょっとチャラいのでオモテになる。
多分チャラさは森光を超える。
あいつはハードはチャラいがソフトが硬いからな。
「先輩、女子に嫉妬してるみたいだよその言い方」
「は?」
朔太郎の言葉に首を傾げる、何で女子に嫉妬になるのだ。
むしろ男どもに嫉妬だ、彰嗣にジェラシーだ。
動きが派手だからすぐにズボンにインしてたシャツがアウトしちゃって慌ててしまうけど後ろをインし忘れるおバカさんなのに、小4まで自分の名前を平仮名で書いてたおバカさんなのに、水泳の授業の日に家から海パン履いてくるから未だに三回に一回はパンツ忘れるようなおバカさんなのに、何でモテるのか。
ノーパンで授業受けてんだぞ、引くだろ。
「何よりも妄想癖の変態だ」
「どこから続いた結論ですか」
「…俺の脳内?」
「先輩って時々天然ですよね」
可愛いけど、と苦笑いする朔太郎意味不明。
可愛い顔して大人びた笑い方すんな似合わん。
相変わらず前方の女子たちはキャッキャしていて。
あぁ、本当に何なんですか。
「俺もフットサルできればいいの?そうしたらモテる?」
「それ以上モテなくていいですから」
「お前はどこの俺の話をしてるの?頭の中?平行世界?前世?来世?」
「今現在俺の目の前にいる杉田先輩です」
「嘘コケこのオタンコナス俺がいつモテた何月何日何曜日何時何分??」
「先輩マジで無自覚!中学の時からモテてたじゃないですか!バレンタインにはいっぱいチョコもらってさ紙袋両手に下げて帰ってたじゃないですか!今現在進行形でもモテてますむしろ今の方が先輩の貞操の危機オンパレードで俺心配ですよ!!」
「バレンタインは見返り欲しさの義理チョコです!お前こそ紙袋何個も下げてたくせに死ね!そして貞操の危機て何だ恐い女の子相手のならバッチコイだけども」
「俺知ってるんですからね先輩がもらったチョコの中に何個かは本命入ってたの!下駄箱に入ってた手紙を村地先輩が処分してるのだって知ってるんだから!!」
「何!!?あの全筋腐れ変態野郎俺の下駄箱勝手に開けてたのか!!しかも手紙処分とかッ…許すまじッ!!!」
「…あの、興奮してるところさーせん…喧嘩なら他所でお願いできます?」
「え?」
いつの間にか俺も朔太郎も大声で言い合ってたらしい。
遠慮がちにかけられた声に周りを見ると女子達の白い目。
ドン引きのフットサルクラブの面々。
そしてキラキラと輝いた笑顔の彰嗣がいた。
「真智ぃ!!俺の活躍見てくれたぁ??」
「くたばれこの変態全筋野郎ッ!!!」
とりあえず、彰嗣に飛び蹴りを食らわした。
だって本当に許せなかったんだもん。
ま、俺の攻撃など幼少期から食らい続けている彰嗣である。
受け方を心得ているので見た目ほど効果はないのだが(イラッとする)。
でも周りからしたら皆のヒーロー彰嗣君が平凡野郎に飛び蹴りをされてるという許しがたい事実。
まぁ罵詈雑言が聞こえますわ、主に女子から。
見慣れてるまりあちゃんは笑ってるけどね、むしろ彰嗣の攻撃の受け方にキュンキュンしてる。
彼女のツボが中々不明だ、先輩ちょっと君の将来が心配だよ。
「痛いよ真智、どうしたの」
「どうしたのじゃねぇわ!お前俺の下駄箱勝手に開けて何してくれてんの!?手紙処分とかそんなに俺に女を近づけたくないのか!!?」
「え?あぁ、下駄箱ね…だって靴を入れるところに手紙を入れるなんて本来の用途と違うじゃない、だいたい真智が靴を出すのに邪魔でしょ?」
「邪魔じゃない!むしろ邪魔されたい手紙になら男子高校生ならそんな障害は本望です!!」
「何それ真智には俺がいるのにどこの馬の骨とも知れない女に興味持つとか、許せないんだけど」
目が据わってる彰嗣に見下ろされてちょっと嫌な予感。
つか周囲が静かに見てるのがすごく気にかかる。
皆何を思っているのか…女の子たち、俺と彰嗣の関係を勘違いしていないだろうか。
この会話、痴話喧嘩みたいだもん。
様子を見たいけど彰嗣から顔を反らすのは危険な気がする。
「真智、俺何回も言ってるよね?俺は真智がすk「あああああ、ちょっと落ち着いて彰嗣さん!こんな公衆の面前で話す話じゃないよねぇ!!!??」」
俺のクラスなら不本意ながらまだしも、他の学年の連中とかもたくさんいる中でする話ではない。
慌てて口を塞ぐと物凄く不機嫌な顔された。
いやいやいや、TPOを考えろ馬鹿たれ。
どうしたものか、周りの目も恐いしな…なんて考えていたらそっと彰嗣の口を塞いでいた俺の手が掴まれて。
「村地先輩、幼馴染だからって干渉しすぎですよ…過ぎると杉田先輩に嫌われますよ」
「…朔太郎、真智に触るなよ」
「村地先輩が離れてくれたらいいですよ」
にっこりと笑う朔太郎が俺と彰嗣の間に入って、彰嗣が朔太郎を睨みつける。
噛みつきそうな彰嗣にもっと離れてーとしっしってする朔太郎、先輩だぞそいつも。
まさしく犬猿の仲だな。
つか、彰嗣の機嫌が急降下だ。
これ以上ないほどマイナスだわ、こんな機嫌悪いの滅多にないぞ。
「村地先輩の気持ちはわかりますけど、重いんですよ」
「何だと?」
「重すぎて杉田先輩を傷つけそうで嫌なんですよね…あんたには杉田先輩は渡したくないなぁ、俺も杉田先輩を本気で好きなんで」
「…ふざけんなよ」
声を潜めて、周りには聞こえない様に言ってくれたけど、朔太郎の言葉は戦慄ものだった。
笑ってるけど、俺の手を掴んだままの朔太郎の手に力が入ってる。
そして彰嗣が本気で怒ってる。
こんなに怒ってるの小学校の時に俺を怪我させた上級生ボコボコにした時以来じゃないか。
何だこのシリアスぶった展開。
俺はこんなの求めていない。
「…お前ら、二人とも重いわボケッ!!!」
「痛いッ!!?」
「~ッ!!!??」
俺の気持ちも周りの迷惑も考えずに。
…俺もお前らの気持ち考えてなかったわけですが。
考えたくなかったけど、五木の言う通り考えないといけないのかもしれない。
「馬鹿じゃないのお前ら、俺はおっぱい大きくてふわふわした可愛い女の子が好きなの!図体デカくて筋肉ガチガチの男なんてお断りだね!!」
言ってて虚しくなると同時に胸がチクリとするのは何故だろう。
しゅんとしてるこいつらがいるからか。
きゅっと口を上げて、俺は踵を返すと出口に向かう。
静観していた周囲の視線が痛い。
不意にまりあちゃんと目が合って。
戸惑ってる様子に苦笑い。
片想いしてる彰嗣、親友の朔太郎。
二人が俺を挟んで睨み合ってるとか。
ごめんね、本当に。
「お騒がせしました!!」
扉をくぐる前、大きな声で言って俺は体育館を出た。
その後どうなったかなんて知らん。
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