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(親友ができました、二人も。) ※高校入ったばっかの話
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「お、美味そうな玉子焼き」
そう言って弁当に誰かの手が伸びて来た。
高校に入って一週間、人見知り気味になってる俺はまだ友達が少なかった。
昼飯は彰嗣と食べることが多いがその日は彰嗣が用事があって。
ぼっちで教室で弁当とかいじめられっ子みたいで泣ける。
そんなことを考えてた俺の弁当を荒らす手。
ぽかんと玉子焼きのなくなった空間を見つめる俺。
美味い、とか横から聞こえる。
目を向けるとフルーツオレを啜ってる明るい茶髪の野郎。
え、玉子焼き食ってフルーツオレ飲んでるの?
気持ち悪くない?
「お前の母ちゃん料理美味いのな、唐揚げも美味そうだし」
俺んちのババァ唐揚げ作れねぇし、とぼやくそいつ。
いつの間にか俺の横の席に座って焼きそばパン食ってるし。
座られてる席の女子が向こうの方でキャッキャしてる。
名前わかんないけど、確か初日から目立ってて女子に囲まれてた。
たまに他のクラスの男子と喋ってるのを廊下で見かけるけど、だいたいは女子と一緒にいる…チャラい感じでちょっと近づきたくないと思ってた。
「飯美味い母ちゃんとかマジ杉田が羨ましい」
俺の名前知ってることに驚いた。
男に興味示さなそうだからてっきり知らないと思ってたのに。
「…母さんじゃないけど、作ってんの」
「へ?」
ぽつり、と呟いた俺に首を傾げるそいつ。
パッチリ二重が俺を見返す、確かにイケメンだ。
女子が気にするのも頷ける。
「…もしかして、彼女とか?」
「違、…自分で作ってる」
「へ…自分?自分で弁当作ってんの?!」
そこまで驚くことか。
大きな声を上げるそいつのせいでクラス中に響いた。
俺が自分で弁当作ってるってこと。
「マジで!?この唐揚げも玉子焼きも…全部杉田が自分で作ってんの?」
聞こえた奴らはいぶかしげにこっちを見たり驚いたり興味津々だったり。
こそこそと話してる奴らもいる。
男が自分で弁当作ってるとか、気持ち悪くない?なんて聞こえた。
ホモじゃね?オカマじゃね?、みたいな言葉も聞こえる。
何で弁当作ってきただけでそうなるんだ。
中学卒業したばかりのガキの頭なんて阿呆だからそんななのか。
苛つくと同時に目の前にいるこいつ、俺のことハメたんじゃねぇのかと。
睨みつけるとそいつはきょとんとして、それから俺じゃなくて弁当をガン見して。
「マジかよー…この唐揚げ冷凍じゃねぇよな、めっちゃ美味そうだし…ポテサラも芋完全につぶれてないの俺の好み…コショウもあらびきとかいいわ…これはエビとアスパラ?エビぷりぷりだし…あ、まぜご飯の鮭も焼いたのほぐしてる…何お前凄過ぎね?料理人でも目指してんの?マジ尊敬するわ、うちのババアと変わってほしい」
マジで飯不味いんだようちのババア、と言葉をしめる。
嘆き入ってる辺り本心だろう。
その裏のない本心に俺は呆然としてしまう。
いいないいな、と弁当を見てるそいつを驚き全開で見ていると、反対からもう一つ顔が覗き込んできた。
ビックリして今度はそいつを見るとやけに表情がなくて余計に驚く。
「本当に美味しそうですね、女の子だったら嫁に欲しいレベルですな」
「…は?」
「嫁てお前…マジ美味いから、嫁とかでなくていいからうちに欲しいレベル」
「一家に一台杉田氏ですか」
「正しくそれ」
「……は?」
こいつも俺の名前知ってるんだ。
確か三つ後ろの席の奴。
基本一人で席に座って本読んでるかスマホ弄ってる。
俺と同じぼっちだけど、頭良さそうな真面目そうな感じでチャラ男とは別の意味で近づき難かった。
そこで不意に思った、このチャラ男もクラスの友達と一緒にいるのを見ないなって。
「杉田氏、料理が好きなんですか?」
「え?いや…別にそういうわけじゃ、ないけど」
「そうなんですか?こんなに手の込んだお弁当なんて好きではないと作れないと思ったのですが」
「…親父のためだし」
「親父?」
「…」
「…言いたくないならいいですよ、でも本当に美味しそうなお弁当です」
さっきまで無表情だったのに、いいですね、と少し微笑んだ。
その顔が優しくて印象ががらりと変わって驚いた。
フルーツオレを啜ってた奴もその顔を見てきょとんとしてる。
「お前イケメンじゃん、無表情も整ってるとは思ったけど」
「本物のイケメンに言われると嫌味にしか聞こえないですよ、爆発したらいいです」
「物騒だなお前…丹波だっけ?」
「丹下です、家光君」
「森光だし、将軍か俺」
「ワザとです、殿って呼びましょうか?」
「苦しゅうない、そのカレーパンを献上せい」
「寝言は寝て言ってください、このバカ殿」
「あはは、お前面白いねー」
「ははは、君もね」
綺麗に笑う森光君と全く顔は笑ってない丹下君。
恐ろしく正反対の二人だ。
しかも会話聞いてると全然仲良いとかじゃなくて初接触っぽいし。
それにも関わらずずいぶんとスムーズにフランクな会話してるし。
それが何だかすごく面白くて、思わず吹き出してしまった。
「ふ、はは…あはは、」
「…」
「…」
笑いが止まらなくて声に出して笑ってしまう。
そんな俺を二人が見てる。
でも笑いが止まることなくて笑い続ける俺。
「杉田、笑いすぎだし」
「笑うと幼い顔ですね、可愛らしい」
笑ってる俺を見てちょっと嬉しそうに笑う森光君。
女の子だったらいいのに、と呟く丹下君。
何だろう、全然今さっき初めて接触したのに。
すごく仲良くなれそうな気がする。
「あはは…ふふ、…はぁ…丹下君、よかったら唐揚げ食べる?」
「え!いいんですか?」
「え!?ズルい!俺も唐揚げ食いたい!」
「玉子焼き食っただろ?俺の分なくなるから無理」
「えぇ…じゃあ明日、俺の分も用意して」
「はぁ?何で、」
「唐揚げ食べたい」
後ろで女子が弁当差し出してるけど、森光君。
口に唐揚げを頬張る丹下君を恨めしそうにしてる森光君はそんな女子のことは気にしないし。
まぁもらったところで女子のオカンの料理が美味いだけだけど。
「…明日な、明日作るからあまり丹下君を睨むなって」
「絶対だぞ杉田、作って来なかったら家に押しかけて作らせるし」
「えぇ…」
「御馳走様でした、大変美味でございました」
「絶対だからな!」
「…はい」
お行儀よく手を合わせて微笑む丹下君の表情に口にあったようでホッとした。
その表情を見た森光君の必死さといったら…明日唐揚げ作るしかないではないか。
…全然嫌じゃないからいいんだけど。
気付いたら周りのこそこそは俺のことから森光君のことに変わってた。
弁当作ってこようかな、とかそんな女子の話。
それから丹下君もカッコ良くないかって、そんな話。
「杉田氏、よかったらこれから仲良くしてください」
「え…あぁ、宜しく…丹下君、森光君も宜しく」
「おう…呼び捨てでいいって、君付けキモイ」
「わかった、森光」
こっそりと耳打ちしてきてにやりと笑う丹下と森光。
ぼっちが三人集まって、コミュを作った。
チャラ男とオタクとオカン系
全然交わる要素のない三人なのに、大の親友となるなんて。
世の中わからんもんで。
「…有り難う、森光、丹下」
こっそりと呟いた言葉、絶対に本人たちには言えないな。
親友ができました、二人も。
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