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思い出話と嫉妬心。
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あれから数日して、金獅子の親父さんの喫茶店に行った。
カフェオレとシフォンケーキをご馳走になって、
金獅子の昔話を聞いたり俺の小さい頃はどんなだったとか、そんな話をした。
金獅子は親父さんの話をすごく嫌がってた。
まぁ小さい頃は可愛くて女の子みたいだったとか、そんな話されたら恥ずかしいんだと思う。
たぶん紗々先輩みたいに可愛かったんだろう。
今の金獅子からは想像つかないけど、紗々先輩のイトコなら有り得なくはないんだと思う。
そういえば幼稚園の時によく一緒に遊んだ僕っ子は可愛かった。
金獅子のようにふわふわした色素の薄い髪でエメラルドみたいなキラキラした目で。
あんなんだったのかな、金獅子も。
あの子は女の子だったけど。
そんなことを思いながら家に帰ると彰嗣が我が物顔で寛いでいた。
お腹すいたーとか言うなら家に帰ればいいと思う。
冷蔵庫から冷やし中華を出す。
今のインスタントはすごい、茹でないで水にさらすだけでいいとか。
きゅうりとハムとカニカマと、玉子は焼かないとか。
「彰嗣、カニカマ割いて」
「いいよ」
ペタペタと裸足の足を鳴らしながら隣に立つ彰嗣。
こいつは小さい頃から俺より大きかった。
カニカマを割いてるこの大きな手に引かれて毎日幼稚園にも小学校にも行ってたんだな。
「なぁ、」
「んー?」
「幼稚園の時さ、俺ら違う組だったじゃん?」
「うん」
「でもお前しょっちゅう俺の組来てたじゃん」
「うん、行ってたね」
よく抜け出して俺の組に来ては先生に叱られて連れ戻されてた。
彰嗣も思い出してか笑いながら相槌を返す。
「あの頃俺さ、同じ組の女の子とよく遊んでたじゃん?」
「女の子?」
「そー何か髪の毛ひよこみたくフワフワしててさー目が緑で、」
そこまで言っても全く共感が得られないことに不思議に思って彰嗣を見ると驚きに目を丸くしてた。
「…気づいてないんだ、」
「何が?」
「いや…」
そこまで言って困ったような迷うようなそんな顔でカニカマを手に取る。
そんなにカニカマいらないんだけど、一袋使う気か。
慌てて袋を冷蔵庫にしまうと俺は玉子を焼き始める。
ジューという音が心地いいなとか思いながら薄い玉子を焼いていると彰嗣が俺の名前を呼ぶ。
「何?」
お、いい感じに焼けそう。
ひっくり返してみようか…両面焼かなくてもいいんだけど今回はやってみようかな。
菜箸を潜らせて持ち上げる、いけそうだ。
「あの子、男の子だったよ」
ほっ!と玉子を返そうとした瞬間だった。
菜箸から玉子が帯が上から下に落ちるようにくちゃくちゃにフライパンに落下した。
「…え?」
「だからあのよく遊んでた子、男だって」
「…はぁ?」
「真智、本当に気づいてなかったの?」
「や、だってあの子…お嫁さんになるって、」
「…真智がママゴトでお父さんよくやってたからじゃないの?僕って言ってたじゃん」
「僕っ子じゃないの?」
「スカートなんて一度も履いてなかったよ」
「…だから、僕っ子」
「男の子だから、」
苦笑いする彰嗣に本当に男の子だったんだと実感する。
幼稚園の先生の次に恋した可愛い子が…男とか酷くないですか。
「えぇ…可愛かったのに、男かよぉ…」
大きくなって再会してムフフな展開とか、有り得ないてことですか。
淡い夢が飛んでったわ。
「真智、玉子焦げてるよ!」
「え、あぁっ!?……わぁ…もったねぇ」
錦糸玉子にならないし、玉子焼きにもならないし。
何これ酷い。
「作り直す…」
「いいよ!これ食べたい」
「えぇ…こんなん美味くないって」
「いいの!」
ニコニコ笑いながら言う彰嗣、変な奴。
勿体無いから有難いけど。
「ふふ、」
「何だよ?」
茶色い玉子焼きを眺めて笑う彰嗣が不気味で怪訝に尋ねると、やっぱり嬉しそうに笑いながら玉子焼きを見つめる。
「これ、真智が料理始めた頃の玉子焼きみたいじゃない?」
真智も昔は料理下手くそだったんだもんね、と。
それを知ってるのは彰嗣と彰嗣の家族と親父くらいで。
色々彰嗣は俺の事知ってるな、幼馴染みだからまぁ当たり前かもだけど。
「なぁ、」
「うん?」
幸せそうに玉子焼きを眺め続ける彰嗣にちょっと引きつつ、話を戻してしまったり。
「で、あの子の名前何だったっけ?」
「…さぁ?真智、ノンちゃんて呼んでなかった?」
彰嗣が興味なさげに答える。
たぶん本気で興味ないみたいだからそれ以上は聞けなかった。
ノンちゃん…ノゾミとかそんな名前かな?
「真智、」
「え?何?」
「お腹すいた」
「あ、あぁ…悪い」
すっかり止まってた手を再度動かしながらやっぱり意識はノンちゃんの名前。
そんな俺をちょっと不安げに彰嗣が見てたとか、気づくはずもなく。
冷やし中華を作りながら俺は悶々としていた。
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