アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
人はそれをパンドラの箱と呼ぶ。
-
ノンちゃんの名前が結局思い出せないまま翌日を迎えた。
悶々とした気分が消えるはずもなく教室に入ってすぐに森光にブスと言われた。
迷わず殴った俺は悪くない。
「もう、朝からバイオレンスだな」
「どうしたんです?杉田氏機嫌悪いですね」
生理ですかと聞いてくる丹下も迷わず殴った俺は悪くない。
女子の視線が若干羨ましそうなのは何でか。
丹下に生理の心配されたいわけ?
残念、丹下は生身の女に興味ない。
「冗談はさて置き、本当にどうしたよ?」
「ん?いや、昔の友達の名前何だっけなって」
「は?それだけ?」
「それだけ」
すげーあきれ顔で見てくる森光に何だよと聞けば、そのまま溜め息つかれた。
「昔っていつの?小学校?中学校?まさか幼稚園とか言わないよね?」
「そのまさかですが」
「…幼稚園なんて、相当思い入れないと覚えてねぇって」
「好きだったとか、イジメられてたとか」
「…そうね」
だから覚えてるんだけどね。
言葉にはしなかったが顔に出ていたようだ。
俺たちの時は確実に静止した。
「…好きな子だったのかな?真智くん?」
「…ノーコメn」
「その言葉は肯定しているのと同義です!」
ビシッ!と突き付けられる丹下の指先が俺の鼻を押している。
プニプニと押される度に森光がブスだなぁと笑う。
お前、ブス専なのか?
可愛い子ばっかいつも連れてるくせに。
「杉田氏がまさかそんなギャルゲの主人公みたいな事考えてるなんて何のフラグですか?まさかその子に再会してお互い惹かれあってラブロマンス的な事が起っちゃうとかそんなフラグですか!?」
「へし折るけど、俺」
「そんなフラグ立ってないし立ってたとしたらお前らには絶対に言わねぇし」
森光のフラグへし折る発言がリアルで嫌だ。
マジでノンちゃんが女の子で再会してなんてあったら森光がノンちゃんを誘惑したりしそう…
ノンちゃんじゃなくても絶対好きな子できても教えない。
「冗談はさて置き、」
「冗談に聞こえねぇよ」
「冗談だって、で?その子のこと何か覚えてないの?あだ名とか特徴的な」
「むしろ村地氏は覚えてないんですか?」
「ノンちゃんてあだ名だけは、彰嗣が覚えてた」
「彰嗣が真智以外のことを覚えてるとか、その子なんかあるな」
森光が眉間にシワを寄せて呟く。
さすが森光、鋭すぎる。
冷や汗がたらり、と垂れるのを感じつつ知らばっくれようとした。
でも、悲しいかな相手は一枚上手である。
「真智、その子は一体どんな秘密があるんだ?」
「…秘密って、そんなもんないって」
「嘘はいけないですね、杉田氏」
じぃっと丹下に見つめられる。
あの無表情の顔に見つめられるのはなかなか辛い。
目を逸らすと、頭を掴まれて丹下の方を向かされる。
固定しているのは森光である。
「杉田氏、正直にお話なさい」
「…」
「白状したほうが真智の為だぞ」
目の前で丹下が、耳元で森光が囁く。
女子がきゃっと甲高い声を上げた気がする。
「真智」
「杉田氏」
「…っ、」
ピンチだ、やばい。
吐いてしまったほうがいいのだろうか。
でも、女の子だと思ってたやつが男だったとか、言えないだろ。
言いたくない。
奥歯を噛み締めてどうにか打開策はないかと考え出したところで、悲鳴が聞こえた。
何事、と思う間もなく森光の痛っ!て声がした。
丹下の顔が若干青ざめている。
緩んだ手から逃げて椅子から立ち上がるとよろめいた拍子に腕を強く引かれる。
そのまま引きずられるようにして、教室のドアへ向かう体。
「っ、待てよ金獅子!」
森光が叫んで、俺はやっと引っ張ってる奴が誰かを知った。
一瞬だけ怯んだように腕から力が抜けたがすぐに強く掴み直されてさっきより急かすようにされる。
痛いと思うけど訴えることもできず、そのまま廊下に出て、どこかへ向かって歩き出す。
隣のクラスが横目に見えて、多分朝練が終わった彰嗣と目が合う。
驚いたよな顔、それから慌て廊下に飛び出て来るのがわかった。
「真智!」
聞こえてきた彰嗣の声に何故か金獅子がびくりと震えた。
それでも手を離すことはなく、足も止まらない。
駆けてくる彰嗣の足音が近づいてくる。
金獅子の腕の力が強くなる。
「金獅子、痛い」
言ったけど聞こえてない。
いつも優しい金獅子が。
怯えているのだろうか?
…彰嗣に?
「真智を離せよ」
「…」
彰嗣の手が俺の自由な方の手を掴んだ。
引かれる力で俺も金獅子を止まる。
「…離せ」
「嫌だね、お前こそ離せよ」
「…お前、何時まで真智にくっついてるつもりだ」
「ずっと、一生に決まってる」
…そんなの嫌すぎるぞ彰嗣。
俺の気持ちを他所に彰嗣の言葉に金獅子はぎっと彰嗣を睨みつける。
恐すぎるぞその顔。
周りの奴らがヒィッと声を漏らしてる。
「お前こそ、今更現れて何のつもりなんだよ?しかもそんなになって…お前は真智に相応しくない」
負けず劣らず睨みつける彰嗣の顔は何だろうなかなか金獅子に負けてない。
てゆーかこの会話何ですか。
彰嗣と金獅子って、知り合いだったの?
何処で出会ったのだお前ら。
今更てことはだいぶ前だよな。
わからんから説明くれないだろうか。
すごい置いてけぼり感半端ない俺は、ギャラリーが見守る中居心地悪いなりに二人に挟まれて途方に暮れていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
36 / 41