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昴流に触れている時、ふと自身の欲求が恋人に向けて良いものなのかと考えるときがあった。
例えば、人に触ることも触られることも怖くて、気持ち悪くて。あかぎれが酷かった、『他人』を拒絶してきた手で愛しい人の腰を掴んでいる。その手に力が入って、もっともっと昴流が俺の腕の中で啼く様を見ようとする。果たしてその時抱いている感情は、昴流に向けて良いものなのだろうか。
例えば、昴流と同じ位細い腰をした女を抱いている。そのことに嫌悪を感じながらも、酷く抱いている事実に興奮する。他人の体温を汚いと思いながらも、そいつに"泣く"ことを求めている。そいつの中での"理想"の俺が崩れていく様を見て、喜んでいる。果たして相手を『"暴力"で捩じ伏せたい』俺と、『もっと昴流をいじめたい』俺の、違いはあるのだろうか。
昴流に抱く加虐心が彼を愛しく思う故のものなのかが、俺には断言することが難しくて。欲に素直になった時、枷を外してしまった時。その時残るものが『暴力』なのか『性行為』なのか。それが分からないことが酷く恐ろしい。
―分かってる、分かってるけど―
昴流が他の奴とは違って俺の中身を見て、俺に"理想"を求めていないことくらい。昴流はどんなにサディスティックな行為になろうとも俺が昴流に『暴力』はしないと信頼してくれていている。それは『俺の中身』を好きでいてくれているからで、俺だって昴流が好きだ。彼らと昴流に抱くものが違えばセックスの目的だって違う。俺はちゃんと昴流が愛しいが故に行為に興奮するのだと分かっている。
けれど、こんなにも違うのに『加虐心』という点においては両方に存在していて。『暴力』と『性行為』を繋げているそいつが俺は怖い。一歩間違えば『暴力』になりうる危なさにどう対処すれば良いのか俺は分からない。
昴流が信じてくれていても、俺は今までのことがあるからこそそう思う。もっと言ってしまえば、『加虐心』に煽られた自身に昴流への『愛しさ』は残っているのだろうかという不安。
俺はどうやっても昔のことを重ねてしまって、紙一重なその存在を見極める術を知らなくて。けれども知ろうとすることも怖い。結局分からないままになってしまうくらいなら、昴流を大事にしたいなら。俺は"こいつ"を封じ込めるべきなんだろう。
「お前こじれてんね〜」
そんなドロドロした部分を吐露する相手は限られていて、そいつに限って笑ってくる。相手が楽観的過ぎるとも言う。
かつての同級生――晃に飲みに誘われて、酔ったついでに言ってしまったまでは良かったが、呑気が服を着て歩いているような奴に言うようなことじゃなかった気もしなくはない。かと言ってブラコンの彗に大好きな弟をああしてやりたいこうしてやりたいとは言えないし、他1名の友人も……嗚呼否、そいつはもともと論外で。友人と言える存在が3人しかいない俺の人脈のなさを嘆けば良いのだろうか。
「要はさ、『カレピめちゃんこあんあん言わせたいけど一歩間違えて傷つけたらどうしよ〜』ってことだろ?」
「……?嗚呼、うん………?」
こいつの喋り方はどうにも慣れなくて理解に遅れるが多分、そういう事だ。
「俺お前みてぇに性癖歪んでないしな〜…。SMって言われてもピンとこねぇけど、『プレイ』と『レイプ』は違くね〜?それが分かってんなら大丈夫っしょ」
こいつがそう簡単に言ってのけてしまうのは、自分の性癖に当てはまらないこそなんだろうが、俺は他者からの「大丈夫」はあまり信じられない性分だ。自分がそう思えて初めての行動に移せる。そもそも俺だって違いだってちゃんと分かってる。
にしてもしかし、ちゃっかり「自分はまともです」とアピールしてきているお前はそこまでまともな人間ではないと一応突っ込ませてほしい。
「じゃあ『プレイ』だと思っていたものが気づいたら『レイプ』になっていたら?」
「昴流ちゃんに昔の相手と同じことするってこと〜?バイブ突っ込んだり首締めたり~?んー…やー、でもそう言うのってプレイの1つにあるんだろ?なら大丈夫――あー、オーケ。理解した〜」
自身の発言の中に生まれた『矛盾』を理解したらしい。それと同時に俺が本当に言いたかったことも。一度頭を抱えて今までのことを整理する素振りを見せると、晃は先の問いの趣旨を確認した。
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