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episode.3
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眠ってしまってからずつ時間が過ぎた頃、誰かの訪問を知らせる音がしきりに聞こえてきた。このリズムでインターホンを押すのは…聞き覚えがある。
ピンポンピンポンピンポンピンポーン……
僅かにインターホンの音がするのは耳に入った。そして大がそれに応答しているであろう話し声も…。
「はい。…ああ漸く来たか、鍵は空いてる、入って来い、話はそれからだ」
知り合いなのだろうか…ここへ来ることを知っていたような口ぶりだった。寝ていられない…起きようと思ったものの…まだ身体が言う事を聞かない。
「どういうことだよ!アイツは?実都はどこだ…!…なんで、発情期なんて…」
「ああ、まぁ落ち着いてくれ。実都なら今ベッドで寝ている。薬の所持がなく然るべき処置を…施した…意味、分かるだろう?同じαなら?」
「っ!!お前…!!手を出したのか実都に」
「だからそうだと言っている。誰も彼を助けてあげられる人は周りにいなかった、お前すらもな」
「それは……!でも、なんで助けて匿ったんだ」
「……理由が必要か?」
「じゃあ…あの噂は本当なのか?〝気に入ったΩをどんな手を使っても手に入れる〟というのは」
「さぁ、どうだろうな?」
薄ら意識が戻って来た時、次に見間に飛び込んできたのは二人の男の話し声だった。1人は助けてくれた操縦士の大だとすぐ解り、相手の男性の声も聞き覚えがあり、記憶を辿ると頭に過ぎるのは、同じ整備士の駿平だ。まさかと…思い重たい瞼を上げて情景を確認する…思った通り目に飛び込んできたのは駿平が大の胸ぐらを掴み殺気立ち火花が散ってるような絵面だ。
「ちょっ、ちょっと…!!何…してるんだよ、ふたりとも…こ、わいぞ…」
状況理解した所で飛び起きるように上体を起こし殺伐としたその雰囲気を一掃するかのように声をかけた。
『起きたのか、実都』
言い合いをしている2人の声がシンクロするように重なりこちらの耳に届く。
「っはは、なんだよ、ハモるほど仲良しなんだな」
『何が仲良しだ…!』
「おい、真似するのやめろよ」
「それはこちらのセリフだ…いい加減にしないか」
「楽しい言い合いのところ悪いんだけど…なんで、駿平が居るんだよ…?」
二度も言葉がシンクロしてハモる様子を微笑ましく見ていれば、ふと、疑問に思い、駿平へこの事の事態はどういう事なのか尋ねた。すると駿平はこちらへと駆け寄ってきて腰を引き寄せガバッと抱き寄せてきた。
「ごめん、実都!…発情期来ていたことにも気づいてやれず、何もしてやれなくて…だいぶフェロモンも抑えられてるみたいだな…」
抑えられてるとはいえ、まだ発情期真っ只中である実都を労わるように背を撫で、身体を離すと両頬を両手で優しく包み額を擦り合わせて視線を絡め、繭でも触れるように優しく手を差し伸べてくれた……が、そのほのぼのとした雰囲気をまたも一掃するように声が飛び込んできた。
「これまでお前が助けてきたらしいな…調べた。そんなに愛おしそうに接するなら…そんなに大切ならどうして番になってやらない。苦しむのは彼だ」
そう言ってきたのは他でもない大だった。その言葉と共に駿平の身体から引き剥がすように抱き寄せ返し、強く懐に収めた。
「まっ、待っ…」
言葉を遮るように駿平と大がまた言葉ハモり『お前は黙ってろ!』と、言ってきた。内心、これだけシンクロするのを目にしたことはなく、この2人は話せば分かり合え仲良くなれるんだろうな…と2人の様子を見ながら呑気に考えていた。しばらく論争は続いたが、ひとまずこの発情期が終わるまではこの場所に滞在すること、という結論で2人は合意した。
「……と、言うわけだ。実都、一週間はここに滞在、仕事は駿平に任せろ。ここに居て、お前に出来ることをしろ」
「ごめんね、実都。仕事のこと気にしなくて大丈夫だから。時々会いに来る」
2人が実都の手を片方ずつ優しく握りながら優しい眼差しで語りかけてきた。その優しさの中には2人の間の火花はバチバチとしてる様子も感じ取れたが、後にも先にもこの2人が自分の〝運命〟というものに絡んでくることは言わずもがなハッキリとしていることだ…と思うと、今ある状況の中で自分に出来ることとその状況の中で少しでも小さな幸せを見つけられたらいいと目先のことだけ考えることにした。
ここから始まった三角関係…そして、どちらと番になるのか、はたまた番にならず別の方法を見出すのか。:大空(そら)へ羽ばたく恋の旅客機の準備は始まったばかり。
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