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episode.8-4
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まだそんなに匂いは強くない……一週間の猶予があればと願った。幸い、まだ周囲が気づくほどの濃さでは無いようで、なんのトラブルもなくホテルへ到着した。
すっかり日は沈み世界が夜の顔へと変化した頃、部屋へと入った。
「実都、ほんの少し匂いがただよっている。念の為気をつけろ」
「うそ!だってまだ……なはず」
「今すぐにどうこうならないとは思うが……」
実都は甘い匂いが漂ってる事に気づいてなかった為、大から聞いた時は驚きが隠せない表情で自分を守るように固く腕組をした。薬はある……そう頭で考え、万が一の時は……と、この時覚悟を決めた。大も又、同じように覚悟を決めていたのかもしれない。
「よし!風呂入ろう」
少し空気が重苦しくなってしまった時、気分を変えようとパチン!と手を叩き、それが部屋に響いた。
「……1人はやだ。大、一緒に入ろう」
「そのつもりで誘ったんだが?」
「そ、っか。そんなに俺と入りたいなら……いい、けど」
「素直じゃないな。湯をためてくる」
実都の素直じゃない態度にクスッと笑って軽く額を小突くと浴室へと向かった。
そして実都は今のやり取りが勝手に脳内で繰り返し、カァァっと耳まで赤く染め『やる事が恋人……みたいだ』とポツリと呟き、部屋の奥にあるキングサイズのベッドへ雪崩込むように身体を沈めた。
「ふかふか、気持ちいい……」
身体を包み込んでくれるように優しくフィットしてくるこのベッドは、まるで誰かに抱かれてるかのような感覚だった。それはとても暖かみがあって……肌が直接触れてるような心地良さ、安心させるように撫でる……手……。
……ん?
……ん、ん!?
感じたもの全てが、何かにそっくりで……薄らと目が覚めた時、髪を撫でられてる感覚を感じて『ベッドで寝落ちた?……大は、湯を……』と、まだ寝ぼけている頭で考えながら次第にハッキリと意識が戻り状況を確認すると、目の前には湯をためにいったはずの大が横になっていて、実都を抱きしめていた。
「なっ、ななな……何、この状況……」
「やっと起きたか。浴室から戻れば寝ていたんだぞ、実都」
「な、んで抱きしめる必要……が?」
「ん?可愛い寝顔の実都を見れば自然とこうなるだろう」
「いや、そんな……へ!?だ、め、……だって匂い……っ!」
匂いが漂ってると聞いたことを思い出すと、大を退けようと両手に力を入れ胸元をグッ、と押した。力を出しているはずなのに……微動打にしない。そればかりか自分の体力の方が奪われていくように感じた。
「ほら、無駄な抵抗だ」
「なっ、離し……て」
悪さをする実都の両手を一纏めにすると、意地悪く笑いながらそれを頭上まで持っていききつく握りしめた。そして、鼻先が触れ合うまでに顔を近づけ実都の視線が逃げないように熱い視線で見つめた。
「恐らくまだ大丈夫だ。だが、万が一の時のこと、考えているか?」
「それ……は、まぁ」
「考えてることが同じか分からないが、その時は俺が実都を守る」
「守るって……ヒートが来たらαの大とセックスすること?そんな……義務みたいなの、もうイヤ……だっ!!」
眉間に皺を寄せて双眼を細めればそのまま視線を逸らした。次第にヒートが来て大とセックスするという義務のような関係性に悲しさや寂しさを感じ瞳に涙を浮かべた。
実都の瞳に光る涙を見た大は両頬を手で支えこちらを向くよう声をかけ視線を絡め、こぼれ落ちそうなその涙を指で拭った。
「今日は泣かせてばかりだな、すまない」
「な、泣いてなんか…!」
「実都、誤解している。またセックスしてどうこうと言う事を言ってるのではない。俺は、ちゃんと契約を結ぼうと、そう思っているんだ」
「う、そ……そんな、本当……に?」
「ああ。実都の性を守りたい。それだけではない、伝わりにくいかもしれないが……実都の事を愛しているんだ」
「そ、んなこと……分からなっか……っ」
「そうだろうな。でも、嫌いならばここまで心配してついて来ないさ」
お互いに視線を合わせながら実都は大の紳士で優しく暖かな眼差しを、大は未だ負担に怯える温度差のある眼差しを感じながら言葉を心に刷り込ませるように真実を傾けた。
「実都、万が一……の対策として、この首輪を付けておいて欲しい。他の誰かに噛まれぬように」
そう言って少し幅のある首輪を取り出すため、実都の両手を解放し、重なっている身体も一旦引くと傍に置いてある旅行カバンから赤い色の首輪を取り出した。そして、起きるよう伝え首輪を持ちベッドへ腰を下ろした。
「これって……首輪?」
「ああ。少し幅がある革製だ。……付けてもいいか?」
「聞くならダメだって……言う、からな!?」
反発をするような言い方に若さゆえか、とクスッと笑うと、手に持っている首輪の金具を外しいとも簡単に装着をした。綺麗な肌によく映える赤い色の首輪……守るための物とはいえ、首輪を付けた実都の姿はいつもより妖艶で唆るものがあり、大もそれを感じなかった訳では無いが、このハワイ旅行は心を繋ぐという意味で仲を深めたいと考えていた。
「なかなか似合う……これはとりあえずは噛まれる心配はないな」
傲慢でクールが大が、この時珍しくフッ、と笑ってみせた。
「……なんか出会った時より物腰が柔らかくなったな、大」
「そうか?自分ではさっぱり分からない」
「あの頃は……傲慢だった」
「そんなにか?……まぁ、これは実都効果だ。さて、そろそろ湯も溜まる頃だろう、行くぞ」
「ははっ、俺効果ってなにそれ」
2人はクスクスと笑った。そして、その場が丸く和んだところで15分ほど経過していると時計で確認しクローゼットからバスローブを出して浴室へと向かった。
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